
主催: 東洋経済新報社、ラーニングイット
協賛: 野村総合研究所、セールスフォース・ドットコム
富士通コミュニケーションサービス、りらいあコミュニケーションズ
後援: 日本コールセンター協会、日本マーケティング協会
日本ダイレクトマーケティング学会、アイ・エム・プレス
Opening Remarks
CXにチャレンジ!
代表取締役社長
畑中 伸介氏
米国西海岸企業を視察した時のことに触れた、ラーニングイットの畑中伸介社長は「経営のCXに対する強いコミットが成功要因と感じた」と、CXを戦略に組み込む経営の役割を強調。事例紹介企業を探すのに苦労した第1回を振り返り、「今回の参加者の3分の2から『具体的に取り組んでいる』と調査に回答があった」と、CX浸透に感慨を込めた。
Opening Speech
CXが働き方を変える
(Customer Care Measurement and Consulting)
バイス・チェアマン
ジョン・グッドマン氏
ジョン・グッドマン氏は、カスタマーサービスのポイントを四つ挙げた。一つ目は、不足する人材の確保・育成。オペレーターには、柔軟な解決策を顧客に提示することができる広い裁量を持たせることで、仕事への満足度を高められるが、管理が課題となると指摘した。二つ目は、マニュアルを読まない顧客の教育。問題が起きると企業の責任を問われるので対応が必要とした。三つ目が、複数チャネルをまたいで、一貫性のある顧客のやりとりを可能にするテクノロジーの活用。四つ目が、データ分析。必ずしもビッグデータは必要なく、顧客の苦情やアンケートのほか、業務データ、従業員の声も分析して、CX向上につなげることで「購買意欲を高められる」と語った。
Global Keynote
Leading the change to Customer Centric
「顧客中心経営」へのシフトをいかに生み出すか
Vice President of Care
リン・ホルムグレン氏
リン・ホルムグレン氏は、顧客関連の全プロセスに責任を持つチーフ・カスタマー・エクスペリエンス・オフィサー(CXO)を置いて「会社としてつねに顧客に向き合うマインドがCX向上に重要」と訴えた。CXで、既存顧客との関係を強化してリピーターにできれば、新規顧客開拓よりもコストを抑えて利益につながる。こうした顧客中心へのビジネス変革は、顧客データを収集し、自社の体制の評価を行って現状を踏まえ、目標、戦略を定める。留意点として、顧客の不満の原因の多くは、顧客の期待に合わない商品・サービスなど企業の問題であり、前線のカスタマーセンターだけでなく全社横断で解決すべきこと。コスト削減は前線の対応の質を低下させ、収益全体に負の影響を及ぼすことなどを挙げた。前線には、わかりやすく目指すことを伝えるとともに、柔軟に解決策を提示できる自由度と、対応スキルを培うコーチングの提供が重要と指摘。「顧客視点に立つことによって、原因の特定、問題解決ができ、クレームも減って売り上げ・利益につながる」と述べた。
講演I
CX戦略の最新動向
CX戦略を実現する6つの要諦
金融ITイノベーション事業本部
リテールソリューション企画部
上級研究員
田中 達雄氏
野村総研の田中達雄氏は、顧客満足とは、良い・悪いが基準の合理的価値と、好き・嫌いが基準の感情的価値に大別でき「CXの向上には感情的価値を満たす必要がある」と述べた。顧客の事前期待はそれぞれ異なるため、画一的な対応では不満を持つ顧客が出てしまう。そこで、顧客ごとに対応するには社員への「エンパワーメント」(権限委譲)がカギになるが、「どんな対応でも許されるわけではなく、上司・部下・同僚による360度評価を並行して行う会社が多い」とした。また、顧客の声を受けてサービスを改善する「クローズドループ」。「トップマネジメント」のコミットメント。顧客をよく観察し、その思考を分析、それを基に計画、実践する「STPD」のサイクルによる潜在的なニーズに踏み込んだ製品・サービス化。「カスタマージャーニー」に合わせたサービスづくり。これらを迅速に行う「アジャイルCX」の6点を、CX成功企業に共通のポイントとして挙げた。
講演II
最新のCXテクノロジーで実現する
近未来サービスのカタチ
顧客を中心に見据えて、一歩進んだサービスを!
マーケティング本部
プロダクトマーケティング
シニアマネージャー
大森 浩生氏
セールスフォース・ドットコムの大森浩生氏は2018年9月に開催された同社のイベント「ドリームフォース」で報告された内容を中心に、CX関連テクノロジーの動向を説明した。CX向上には、購入前はマーケティング、購入時は営業、購入後はカスタマーセンターと、サイロ化された組織が別々に対応するのではなく「一連のカスタマージャーニーを実現する組織にして、再購入に結びつけることが重要という指摘があった」と述べた。顧客情報は、さまざまなシステムに点在しているので、まず、これらを統合するプラットフォームで、データを収集、活用できる仕組みを構築して、顧客接点の従業員が働きやすい環境を整え、「顧客中心にサービスを提供する方向に企業文化を変えていく改革が必要」と訴えた。また、同社の提供するチャットボットや音声チャット機能のデモも披露。「デジタルで接客するテクノロジーは急速に進化している」と、最新のテクノロジーへの対応が容易なプラットフォームの重要性を呼びかけた。
講演III
企業変革を牽引するCX時代の
カスタマーサービス実現のポイント
デジタル・マーケティング本部
部長
小長谷 渉氏
コンタクトセンター運営など顧客接点のアウトソーシングサービスなどを展開する、りらいあコミュニケーションズの小長谷渉氏は、商品の機能的価値から情緒的価値重視へ転換するCX戦略を紹介した。「オペレーターの応対評価スコアと顧客ロイヤリティ影響度は相関がない。相づちや復唱ができても、情緒的価値は生まれない」として、サービスで提供する価値を実行者に浸透させることを訴えた。また「デジタルチャネルに比べ、旧来型チャネルのほうが信頼度が高い」という調査結果から、コールセンターなどのリアルチャネルの重要性を強調。チャットボットなどデジタルで顧客と交流して情緒的価値を生むことはハードルが高く「外資系企業は、顧客からの電話を増やすことに関心を高めている」と述べ、リアル・デジタルもともとの良さをカスタマージャーニー上で生かすことを説いた。一方、パーソナライゼーションについては、リアルチャネルで実現するのは難しいが、まずは、マニュアルによって画一化されたサービス提供をやめるところから取り組むことを勧めた。
特別講演I
挑戦魂(チャレンジスピリット)!
グローバルで一気通貫したCX戦略によるビジネス革新
カスタマーサービス本部 副本部長
村上 浩氏
マツダの村上浩氏は、この2年半のCXへの取り組みについて話した。モノづくりと販売、サービスをつないだ変革を推進する「MDI(マツダ・デジタル・イノベーション)」プロジェクトの主要な柱としてCXに着手。まず、グループ内で先進的なCXを実現している国のプロセスを可視化したものを基に、主要国のマーケティング、セールス、サービス、IT部門の責任者が、グループ理想のジャーニー「グローバル・マスター・CXマップ」を策定した。マップは21シーンの顧客接点や、実現したい顧客感情、具体的なソリューションなどで構成。これを基本に、各国の主体性を尊重して各国最適な理想のCX実現をグローバルで進める。カナダでの取り組みを例に「当初は懐疑的だった社員が徐々に本気になってきた」と手応えを口にした。また「顧客に価値を届けられるのは人しかいない」という考えの下、顧客接点のスタッフを全社で支援する意識を浸透。「理想のCXを通じ、お客様や社会と強い絆で結ばれたブランドを目指す」と語った。
講演IV
人とICTが提供するCX
~顧客接点デザインのヒント~
サービスイノベーション推進統括部
課長代理 兼 経営戦略室員
横田 喜子氏
富士通コミュニケーションサービスの横田喜子氏は、スマートフォンやPCの反復購買、他社流出への影響因子に関する調査から、カスタマーエンゲージメントはNPSだけでは説明できず、スイッチングコストや、有人サービスの顧客接点で感じた親しみなどの人的影響を示す、同社の独自指標「HC‐X(ヒューマン・コンタクト・エクスペリエンス)」の影響が大きいとする結果を示した。チャネルデザインの施策では、ウェブやチャットボット、有人チャットやメール、電話や対面といったチャネルごとに、スピード、情報量、心情理解などへの期待値が異なるとして、それぞれのチャネルに対する顧客の期待値を把握、それに沿ってサービスレベルを設計する。また、チャネル間で顧客への回答に齟齬(そご)を来さないよう、カスタマージャーニーに沿ってサービスを点検することを勧めた。ICTと人が融合したプロセスになる中で「全体をコーディネートするのは人の役割」と訴えた。
特別講演II
最高のサービスをお届けするために
~全ては“仮説力”~
人事部・システム統轄部担当、
イノベーション企画特命担当
木下 政孝氏
アコムの木下政孝氏は、同社のCX調査について報告。同社サービスで痛点を感じた場合、それをコールセンターに伝え、その回答に満足した顧客の継続意向は76%と、痛点なしの46%を上回って最高だったという結果を説明。「ロイヤリティへの影響度を定量的に把握したことで、社内で取り組みの必要性への納得感が高まった」と述べ、申し出率向上へ、チャットの顧客接点を開設するとした。また、利用上限額と借入額を混同した顧客から「利用上限の選択肢は10万円からだが、3万円しか借りたくない」という問い合わせを受けたのをきっかけに「新規顧客が離脱している可能性」を想定して、上限額をプルダウンメニューの選択式から自由入力式に変えたところ、このポイントでの離脱率が3分の1になった事例に言及。「CX高度化には仮説力や情報収集力、検証力を持った人財が重要」と強調。CXの取り組みを従業員体験に広げ、従業員満足を高めたいという考えを示した。
特別講演III
Peach流“逆張り”の顧客体験価値改善プロジェクト
~「足し算」ではなく「引き算」で考える顧客満足度~
取締役副社長 兼 COO
森 健明氏
航空会社のPeachの森健明氏は、海外勢参入で競争が激化する市場の中で「コストをかけずに顧客不満足を解消し、低運賃を維持しながら、顧客離反を防いで繰り返し利用してもらう」CX施策を話した。同社は12年の運航開始当初から、安全と定時の運航に注力してきたが、手荷物ルールが顧客に伝わっていないなど、サービス面の課題があった。調査で、顧客の不満が「最大20%の顧客離反につながる可能性」が示されたのを受け、17年に部門横断で「顧客不満足解消プロジェクト」を発足。つながりにくいコールセンターのクレーム受け付け余地不足をカバーするため、ウェブサイトの充実、チャットボット導入を推進。社内向けに、グッドマン氏を招いた講演会開催や、顧客の声などを紹介する「顧客不満足解消通信」を発行してカルチャー醸成に努めてきた。森氏は「『ちゃんと飛ぶ』を第一にアジアのリーディングLCCを目指す」と力を込めた。
ディスカッション
「CX戦略」強化における経営の役割とは?

ディスカッションでは、CXをいかに推進するか、その目的、KPIについて特別講演の3氏に聞いた。
マツダの村上氏は「CX推進に重要なのは意識改革」と強調。顧客と向きあう価値観の定着には「結果よりも従業員の行動を評価するマネジメント変革」が必要とした。CXの目的は、リテンションビジネスで成長して「グループ全員を幸せにすること」。KPI管理は「数字が目的化してしまう」事態への注意を促した。
アコムの木下氏は、CXに限らず、新たな取り組みで重要なのは「人を巻き込む力」と指摘。より多くの人に当事者意識を持ってかかわってもらうことが重要という考えを語った。KPIについては、痛点を感じる人を減らし、コンタクトセンターへの問い合わせ率と、オペレーターの応対力の向上を目指すとした。
Peachの森氏は「顧客を流出させ、リピーターを獲得できなくなれば、将来はない」と、CXの目的は経営課題そのものとの認識を示し、不満解消と運航品質向上で増えた利益は「従業員にボーナスで還元する」仕組みに触れた。KPIは、コールセンターの応答率や定時運航率などの結果指標を見ているとした。
最後にラーニングイットの畑中氏は、この日の講演を振り返り「顧客の不満に気づくだけでなく、仮説を立てて改善策を実践すべきということが共通のメッセージだったと思います」とまとめた。