その大学のキャリアセンターに、アンケート調査を実施し、467校から回答があった。その中で「学生に人気の業種」を5つ聞いている。その結果、1位は公務員の28.3%で、次いで銀行の18.6%、教員の17.8%の順となっている。以下、食品、サービス、商社、情報と続く。
地方を中心に公務員の人気は高い。地元の大学から就職先も地元でという考えが根強く、その中で地方公務員が有力な就職先の選択肢となるからだ。銀行や教員も、同じ考えからだろう。地元の銀行への就職を考え、メガバンクへの就職はあまり考えていないと見られる。
アンケート調査では初めて、「学生に勧めたい大手企業はどこか」という項目を設けた。それをまとめたのが今回の「学生に勧めたい大手企業ランキング」だ。6社連記で記入してもらい、1番目に書いてある企業を6ポイント、2番目を5ポイント、3番目を4ポイント、以下3、2、1としてカウントし、それを集計している。企業を選択肢から選ぶ方式ではないため、かなり多くの大企業に票が分散しているが、それでも票が集まる企業はある。
トップはANAだ。以下、2位JR東日本、3位トヨタ自動車、4位日本航空、5位JR東海と続く。まさに大企業ばかりで、航空、鉄道、自動車の企業が並ぶ。
1位はANAで、航空や鉄道が上位
この結果について、前述の清水社長は、「キャリアセンターの方が勧める企業に共通するのは安定性。ベンチャーから成長した企業などが入っていないことを見ても、安定性で勧めていることが分かります。それと業種のトップ企業がすべて入っているわけでもないことも特徴でしょう。アステラス製薬があっても、武田薬品は出てこない、高島屋はあっても、三越伊勢丹は出てこない。大学と企業の関係性などもあるのかもしれません」と分析する。
確かに、今人気の楽天、ヤフーなどは出てこない。一方でベンチャーとは対照的に、明治時代に創業した歴史ある企業が上位に来ているのも特徴だ。
文系学部が多い大学と理工系大学では、当然ながら、勧める企業は異なる。7位のデンソーや、21位ディスコ、27位荏原製作所といった、自動車部品メーカーや機械系メーカーがたくさん出てくるのも、理工系大学からの回答が含まれているからだ。
業種では学生に人気が高かった銀行だが、ここでは、21位の三菱UFJ銀行、27位の三井住友銀行しか出てこない。ただ、銀行を勧める大学は多く、47位以下のランキング外だが、広島銀行(本店・広島)、京都銀行(本店・京都)、第四銀行(本店・新潟)、北海道銀行(本店・北海道)といった名前が出てくる。
すべての地区の大学が勧めているわけではないので、ポイントは多く獲得できていないものの、地元の大学が勧めていることがわかる。地方の優良企業も表中には出てくる。30位のカメイ(本社・宮城県)、36位の中部電力(本社・愛知県)、47位の日本精機(本社・新潟県)などだ。
ちなみに、学生の人気企業ランキングの上位に必ずと言っていいほど出てくる、総合商社が1社も入っていない。その理由としては、採用が有名難関大に偏り、そこに入っていない大学だと勧めにくいという事情もあるのだろう。
各大学に企業への採用数も調査しているが、今年の結果では、三菱商事や三井物産への採用があった大学は、わずか約30校にとどまる。それに対し、勧めたい企業トップのANAや2位のJR東日本は、140校以上になる。
もちろん、採用数の違いもある。ただ、三菱商事では慶應義塾大39人、早稲田大27人、東京大24人が就職しており、この上位3大学で採用総数の5割を超えている。採用人数が多いことに加え、幅広く採用している企業を勧めているということだろう。
上位には学生に人気の企業も多数含まれ、キャリアセンターが勧める大手企業も狭き門であることに変わりはない。ただ、キャリアセンターお勧めの企業は、安定し、かつ発展性があることだけは確かではないだろうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら