SNSの発言が本人の人生を破滅させる恐怖 「何も書かない」が最良の選択ではないか

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さて、そんなかつてはツイッター熱心だった筆者が約1カ月間、何も投稿しなくなったが、困ることはほぼない。Hagex氏の事件以降、もう人前でイベントに出る気を失ってしまったため、告知をする必要はない。記事を書くにしても、編集部や編集者がツイートをしてくれる。

できることなら自分も告知を手伝ったほうがいいのは理解しているのだが、「ツイッターは義務感からやるべきものではない」という持論があるため、やりたくないときはやらない(必要な時期が来たらまたやるかもしれないが……)。

そもそも【2】~【5】のツイートも投稿していない時点で、告知ツイートをしてもフォロワー数を減らすだけだろう。

不特定多数に向けた「つぶやき」に意味はない

仮に今、ツイッターの投稿を再開するとしたら何を書くかを考えてみた。1つ目はシャワーを浴びながら思っていたことだ。

ほんの3年前まで夏だろうが1週間風呂に入らずとも気にならない人生を送っていたが、去年から毎日入らなくては気持ちわるい体になってしまった。風呂は嫌いでしょうがないが、「汚い自分」「ヒゲが無駄に伸びている自分」が耐えられなくなってしまった。昔の状態に戻りたいぜ。

2つ目は「やっぱりこの人はまともなんだな」と思ってもらうための単なる自己満足である。

ギャラが上がるという珍しい体験をした。元々オレは「言い値」で仕事を受けることにしているのだが、某メディアでオレの書いた記事のPV(ページビュー)が好調ということで2倍にしてもらえた。ありがたいことではあるが、同時にプレッシャーを与えられるということでもある。しかし、嬉しい。ありがとうございます。

果たしてこんなつぶやきを投稿して何になるのだろうか? あとはサッカーW杯でフランスが優勝したときに、「クロアチアが負けてしまった! 残念!!」と書くことに意味があるのか?

もはやSNSの存在意義にまで踏み込む話になってしまったが、自分としては、「宣伝を除き、リアルで知っている人、自分に好意を持ってくれている会ったことのない人限定で現状を知らせたり、悩みや悲しさ、嬉しさを伝えたりすることに意味がある」という結論になりつつある。要するに、フェイスブックやLINEなど承認制のSNSを「人からちょっと褒められたい」「ちょっとおもしろがってもらいたい」程度の期待値でやればいい。

一方、不特定多数に向けて「つぶやき」を見せることの意義は現時点では、見いだせない。いつなんどき過去の発言がきっかけで裁判を起こされたり、あるいは、現在の自分の立場を毀損する状況に陥ったりするかはわからないのだから。

これまでツイッターでの発言により失脚した人々は人身御供になったようなものである。彼らが被った実害は「いつ自分にふりかかってもおかしくなかった」という気持ちは持ったほうがいい。そして、これまであなたがSNSに書いたこと、あるいはこれから書くことが、同様の損害をもたらす日が来ないとは限らない。

いつしか「今までオレは何のためにSNSで発信していたんだ……」と、はたと振り返る日が来るかもしれない。それが現在の私だ。

中川 淳一郎 著述家、コメンテーター

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なかがわ じゅんいちろう / Junichiro Nakagawa

1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライターや『テレビブロス』編集者などを経て、出版社系ネットニュースサイトの先鞭となった『NEWSポストセブン』の立ち上げから編集者として関わり、並行してPRプランナーとしても活動。2020年8月31日に「セミリタイア」を宣言し、ネットニュース編集およびPRプランニングの第一線から退く。同年11月1日、佐賀県唐津市へ移住。ABEMAのニュースチャンネル『ABEMA Prime』にコメンテーターとして出演中。週刊新潮「この連載はミスリードです」他連載多数。

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