社会に好循環を生み出す
環境・CSR戦略
海外への情報発信が足りない
この十数年を振り返ったときのもう一つの展開は、時間軸が伸びてきたということです。企業の活動は単年度を基本にしている場合が多いので、長い時間軸では取り組みにくい面があるのですが、本当の意味での持続可能性を考えると、次の世代をどう育成するかという視点がどうしても必要になってきます。そしてそのとき、時間軸の長い取り組みが必要になってくるのです。そこに気がついて、子供たちに環境教育をする企業なども増えてきています。
このように日本企業のCSRも進化してきているのですが、欧米の先進的な企業と比較すると、まだこれからという面があるのは否めません。欧米の企業はおしなべてトップマネジメントが認識すると会社全体が動いていきますが、日本では一人が気づいてもなかなか組織的に動きにくいところがあるようです。
また欧米では企業がNGOなどと対等のパートナーとして協力し合う例も多いのですが、日本では、企業は企業、NGOはNGOと分けてとらえる面が強くあります。これには歴史的な背景などもあるのですが、そういう意味では欧米企業のCSRのほうが、社会に対して開かれていると言えます。
欧米との比較という点では、日本企業は海外への情報発信が足りないということも指摘しておきたいと思います。もちろん英語版のCSR報告書を出している企業も多いのですが、残念ながらそれがほとんど海外に届いていないのが実情です。事実、私は海外の企業やNGOなどのネットワークにも参加していますが、海外では一般の市民はもちろん、有識者やNGO関係者でさえ日本企業のCSR活動についてほとんど何も知らないのが現実です。