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社会に好循環を生み出す
環境・CSR戦略

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
社会的責任を理念と実践に織り込まない経営はもはや「経営」とさえ呼べない時代─。
そのような背景の中で、環境・CSRレポートなどによる企業の情報発信は、学校や地域社会などの現場で多様に活用されることで、一般市民の社会学習を促し、新しい発想で企業社会を考える素材として、目覚ましい成果を挙げている。
環境・CSRレポートが社会学習のツールとして認知・活用されている以上、一層の信頼構築に向けたコミュニケーション・ツールとしての積極活用は、「社会に好循環を生み出す」積極的な戦略としての価値と使命を帯びつつある。
十数年にわたり、世界中の環境リーダーへの取材を通してCSR経営の実践例を調査し、同時に社会に好循環を生み出す考え方「システム思考」の研究者としても知られる枝廣淳子氏に今求められる環境・CSRの基本コンセプトについて話を聞いた。

CSRの本来あるべき姿とは?

枝廣淳子(えだひろ じゅんこ)
環境ジャーナリスト、幸せ経済社会研究所所長。
アル・ゴア氏著『不都合な真実』の翻訳をはじめ、環境問題に関する講演、執筆、企業コンサルティング、異業種勉強会等の活動を通じて、「伝えること」でうねりを広げつつ、変化を創り、広げる仕組みづくりを研究。「つながり」と「対話」で、しなやかに強く、幸せな未来の共創を目指す。主な著訳書に『「システム思考」教本』『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?』(東洋経済新報社)、『学習する組織』(英治出版)ほか多数。

日本の「CSR元年」と言われたのは、2000年ごろのことでした。それから今日までの間には、いろいろな方向での展開と広がりがありました。もともと日本にはCSRとサステナビリティが同じような方向で入ってきましたが、今日ではCSRもサステナビリティも、環境保護活動だけではなく、社会的側面や経済的側面もあると考えられるようになっています。そういう意味で展開が広がったというのが、この間の大きな動きの一つです。

ここ数年、企業の本業を通じてのCSRが増えてきたのも新しい動きです。これはCSRの、本来のあるべき姿だと思います。当然、本業を通じてのCSRのほうが長続きしますし、社会に与える影響も大きくなります。

経済のグローバル化に伴い、CSR活動を国内だけでなくグローバルに行う企業が増え始めていることも大きな変化です。ただし、この点についてはまだこれから、というのが私の正直な印象です。

いずれにしてもCSRでとても大事なのは、個社の中だけでは完結しないということです。そのことに気づいて、社会との対話や、社会とともに創る(私はこれを共創と言っています)ことを始めようとしている企業と、相変わらず個社で完結するメンタリティでやろうとしている企業と、大きく二つに分かれています。しかし、工場の廃棄物一つとっても、その出口だけを見ていては仕方ありません。工場の中のさまざまな要素がつながって廃棄物が生まれてくるのですから、そのつながりをたどっていくことで、プロセスや設計を変更して廃棄物を減らすという結果が出てくるのではないでしょうか。そのように、つながりをたどって全体像を見るという「システム思考」がなければ、CSRはできません。そしてそういうつながりをたどっていけば、社会との関係性や時間軸の異なるところの要素も出てくるはずですから、もともと個社で完結するはずがないのです。

CSRの担当部署の人たちは、実際の活動を始めるとそのことがすぐわかります。でも、トップやマネジメント層がそのことを認識していない企業は、なかなかそこに踏み出せません。

海外への情報発信が足りない

この十数年を振り返ったときのもう一つの展開は、時間軸が伸びてきたということです。企業の活動は単年度を基本にしている場合が多いので、長い時間軸では取り組みにくい面があるのですが、本当の意味での持続可能性を考えると、次の世代をどう育成するかという視点がどうしても必要になってきます。そしてそのとき、時間軸の長い取り組みが必要になってくるのです。そこに気がついて、子供たちに環境教育をする企業なども増えてきています。

このように日本企業のCSRも進化してきているのですが、欧米の先進的な企業と比較すると、まだこれからという面があるのは否めません。欧米の企業はおしなべてトップマネジメントが認識すると会社全体が動いていきますが、日本では一人が気づいてもなかなか組織的に動きにくいところがあるようです。

また欧米では企業がNGOなどと対等のパートナーとして協力し合う例も多いのですが、日本では、企業は企業、NGOはNGOと分けてとらえる面が強くあります。これには歴史的な背景などもあるのですが、そういう意味では欧米企業のCSRのほうが、社会に対して開かれていると言えます。

欧米との比較という点では、日本企業は海外への情報発信が足りないということも指摘しておきたいと思います。もちろん英語版のCSR報告書を出している企業も多いのですが、残念ながらそれがほとんど海外に届いていないのが実情です。事実、私は海外の企業やNGOなどのネットワークにも参加していますが、海外では一般の市民はもちろん、有識者やNGO関係者でさえ日本企業のCSR活動についてほとんど何も知らないのが現実です。

「質」が問われるCSR報告書

まずCSR報告書の作り方に問題があります。日本国内向けに作成した報告書をそのまま英訳しただけのものが多いのですが、日本語と英語では論理構成が違います。日本語では外堀を埋めてから結論をいうのが通例ですが、英語ではまず結論を示し、それからその理由を述べていくという構成が一般的です。ですから日本の報告書をそのまま翻訳したものでは、欧米の人は途中まで読んでやめてしまいます。

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なぜ企業CSRに投資すべきか(ループ図)

日本企業のCSR報告書は、これまでの実績を示すだけで終わっているものが多いのも気になるところです。CSR報告書を読む人は、過去の実績に加えてこれからその企業がどの方向に進むのかということも知りたいのです。少なくとも大手企業は大半がCSR報告書を出しています。でも、CSR報告書はもはや出すかどうかではなく、その「質」が問われる時代なのです。企業価値を高め、社会に好循環をもたらすためには、どういう報告書をどうつくればいいのか、ということを真剣に考えるべきでしょう(なぜ企業はCSRに投資すべきかについて、システム思考でいう「ループ図」を示しますので、参考にしてください)。

米国では、CSR活動にきちんと取り組んでいる企業のほうが業績がいいという調査が複数発表されています。そのため投資家は、投資先を選ぶときにCSRを参考にしています。そこに日本企業の情報がなければ、投資家の目が向けられることはありません。それが企業にとって大きなマイナスであることは言うまでもないことでしょう。