「金融政局」で逆転もくろむ麻生首相の術中

「金融政局」で逆転もくろむ麻生首相の術中

塩田潮

 政治の世界でよく使われる「政局」という用語は意味不明である。
広辞苑では「政治の局面。政界のなりゆき」という説明だが、これではなんのことかわからない。政界では「政局にする」は意図的に政権争いに持ち込むこと、「政局になる」は政治上の紛争が政権争いにまで発展するという意味だ。

 9月以来、政治は解散・総選挙モードで「解散政局」といわれてきたが、金融危機襲来で、麻生首相は危機回避策・景気対策優先に舵取りを変えたため、「金融政局」の要素も強くなってきた。「経済に強い」と自負する首相は「解散政局」から「金融政局」に転換を図ってポイントを稼ぐ算段なのかもしれない。

 ところが、攻める民主党は麻生流「金融政局」には対決回避で、課題処理に協力する作戦を取り続けている。優勢といわれる総選挙に早く持ち込みたい一心と見られるが、場面が「金融政局」に変われば、へまをやってつまずくかもという懸念があって、少し腰が引けているのではないか。
 というのは、小沢民主党代表は「金融政局」では、過去に2回、対応を誤ったことがあるからだ。1996年、住専処理問題の際、新進党党首として公的資金投入に徹底抗戦戦術を取ったが、最後は世論の反発で腰砕けとなった。次は自由党党首時代の98年、民主党提案の金融再生法案を小渕内閣と自民党が丸呑みしたのを見て最後に自自連立に走った。結果的に自民党政権延命に手を貸して苦汁と辛酸を味わった。

「政局の小沢」には、もともと政略偏重、政策軽視という批判も強いが、麻生首相登場以後の小沢民主党は、早期解散待望論に傾斜しすぎてせっかくの政府・与党追及の好機を逃している面がある。「戦う民主党」という本来の姿勢を忘れると、「金融政局」で逆転をもくろむ麻生首相の術中にはまり、つかみかけた国民の支持を逃すことになりかねない。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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