アンメットニーズに応える成長戦略 革新的新薬をグローバル市場へ
グローバル市場を見据えCSRを推進
小野薬品工業は今、その姿を大きく変えようとしている。「これまでは市場も企業風土もどちらかといえばドメスティックでしたが、がん領域に足を踏み入れたことを機に、新しい風が必要になりました。新領域を開拓していくために、既存の価値観にとらわれない個性的で多様な人財を増やしています」と相良氏。女性の活躍推進のための体制づくりや働きやすい職場作りを進めるだけでなく、人種や国籍はもちろん、専門やキャリアに捉われず、多様な人財の採用を進めている。
加えて、今後グローバルに事業を拡大し、さらに激しい競争を勝ち抜いていくためには、どのような事業環境の変化にも揺るがない強固な企業基盤が欠かせない。そのためコーポレート・ガバナンスを強化するとともに、CSR経営も積極的に推進する。「人々の医療に役立つ有効性と安全性に優れた質の高い医薬品を開発することを根幹としながら、環境や社会への貢献も企業としての責務だと考えています」と相良氏。東日本大震災復興支援の一環として、14年から被災地の子どもたちを対象に開催する「すこやかカラダ大作戦」もその一つだ。「被災地で社会課題の一つになっている小児の肥満に着目し、その解決の一助になればとトップアスリートや生活習慣病の専門医と連携して、子どもたちにスポーツや体を動かす楽しさを伝える活動を行っています。これまで福島県、宮城県、岩手県の3カ所で実施し、来年度以降も継続する予定です」。また、同社はMR全員が「認知症サポーター養成講座」を受講し、認知症患者やその家族が安心して暮らすための支援も実践しており、認知症患者が制作した絵画や書道などの作品をWEBサイト上で紹介する「ふれあいつながる作品展」も好評を集めている。その他、小中高生を対象に出張授業も実施。薬や理科への関心を促し、優秀な理系人材の育成にも寄与する。「マーケットを世界に定めた時、企業経営もグローバルスタンダードにそって推進していく必要がある。今後さらにCSR活動へも資源投入を進めるなど企業基盤を強化していきます」と意欲的だ。
創業300年を越えてさらなるチャレンジ
新薬開発に特化する小野薬品工業の経営方針は一貫している。今後世界のビッグファーマと互角に渡り合っていけるかどうかは、画期的新薬を生み出す研究開発力にかかっている。「そのために研究開発費として年間1千億円を投じることのできる企業基盤を築くことが当面の目標です」と相良氏。18年はその門出にふさわしい年となりそうだ。すでに複数の新薬が臨床試験の最終段階にあり、19年度にかけていくつもの新薬が上市される予定だ。
「いまはまだ世界に一歩を踏み出そうとしている新参者にすぎませんが、世界で認められるグローバル・スペシャリティ・ファーマを目指して取り組んでいきます」。次の100年に向けて、小野薬品工業の挑戦は続く。