大揺れ森友政局、安倍1強政権は耐えられるか 「佐川斬り」も火に油、絶体絶命の財務省
佐川氏の国税庁長官辞任については、2月中旬の確定申告受付開始の前から永田町で取り沙汰されていた。財務省理財局長として、昨年の通常国会で、森友問題での国有地売却交渉に関する記録は「すべて廃棄した」とした上で「法令上まったく問題がない取引」との国会答弁を繰り返し、野党やマスコミから「虚偽答弁」として追及されていたのが佐川氏だ。
その人物が「徴税の最高責任者」では、国民の不満が爆発するのは当然で、確定申告の開始以降、国税庁や一部の地方税務署前で「佐川長官を罷免せよ」などの旗を掲げたデモ隊の抗議行動が続いた。このため、与党内でも「早くクビにすればいいのに」(自民若手)との声が相次ぐ状況だったからだ。
「佐川カード」温存がアダに
昨年7月の長官就任時に恒例の記者会見も取りやめた佐川氏は、その後も続く批判に、「辞めたい」との意向を財務省当局に伝えたが、「疑惑再燃につながりかねない」(財務省幹部)との政権側の判断で職にとどまってきたとされる。その佐川氏の突然の辞任劇の引き金となったのは、朝日新聞が2日に報じた「書き換え疑惑」による国会混乱と、9日に発覚した近畿財務局の交渉担当者だった職員の自殺とみられている。
政府が持ち回り閣議で佐川氏の辞任を了承した直後の9日夜、ほぼ9カ月ぶりに財務省内で取材陣の前に現れた佐川氏は、国会答弁当時と変わらないややこわばった表情とメモを見ながらの慎重な弁明で、取材記者の質問攻勢を交わし続けた。先行した麻生財務相の「説明会見」で、任命責任を問われた麻生氏は「適材適所の人事だった」と繰り返し、辞任に当たって佐川氏を減給処分にしたこととの矛盾も露呈した。
佐川氏は「辞任は9日朝に決めた」と説明し、最大の理由が「決裁文書の(書き換え)問題」であることも言外に認めた。その一方で、7日に起きていた近畿財務局職員の自殺については「(9日午後の)ニュースを見るまで知らなかった」と辞任との関連を否定した。
佐川氏辞任までの一連の経過から、永田町では「政府や自民党は国会混乱打開の切り札として、『佐川カード』をキープしてきたが、森友疑惑の想定外の展開で、対応が後手後手に回った」(公明党幹部)との見方が広がる。具体的には、財務省が否定しきれない「書き換え疑惑」に関係職員の自殺も重なった段階で、政府与党として「対応の遅れが事態悪化につながる」(自民国対)との危機感が急速に高まった結果だとみられている。
一方で、佐川氏辞任については、「週明けに公表される書き換え疑惑に関する省内調査の内容を先取りした処分」との見方も広がり、10日夜になって一部のメディアが「財務省書き換えを認める方針」と報じた。2016年6月の森友学園と国有地の売却契約に関して作成された決裁文書にあった「特殊性」など一部の記述が、国会への提出文書では削除されていたことが確認された、との情報をキャッチしたからだ。
このため、同省は12日に国会に報告する省内調査結果で、書き換えの事実を認めざるをえなくなったとされる。佐川氏の辞任に関して決定権者の麻生氏が、あえて検察捜査などの結果次第で追加の懲戒処分を下す考えも示したのも、こうした省内調査結果を予測した上での判断だったとみられている。同省にとって「大阪地検の捜査による『書き換え』発覚は、財務省の存亡に関わる大事件」(財務省幹部)との危機感が強かったからだ。
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