若き博士たちが明かす意外な「本音」とは? 分野も固定観念も、軽々飛び越えて描く将来
「物質科学」領域を融合し 専門分野を超えて学ぶ
2012年10月、文部科学省の「博士課程教育リーディングプログラム」の一つとして、大阪大学の「インタラクティブ物質科学・カデットプログラム」(以下、プログラム)がスタート。それから約5年が経過した今、第1期生(一般選抜生)が5年一貫の博士課程プログラムを終え、社会に羽ばたこうとしている。
本プログラムの特徴は、その名の通り「物質科学」領域に焦点を絞り、産・官・学の広いフィールドで物質科学研究・事業のリーダーとなる人材を育成するところにある。
「昨今は、人類の存続を脅かすような地球規模の課題が多々生まれてきました。それらを解決するためには、複数の分野が融合して新たな視点を獲得し、革新的な技術を生み出す必要があります」と話すのは、プログラムコーディネーターの芦田昌明教授。
「特にAIやIoTなど新しい技術が発展するほど、物性物理や物質化学、材料・デバイス工学といった『物質科学』の技術が重要になります」と、「物質科学」領域に着目する理由を明かす。
本プログラムでは、基礎工学研究科、理学研究科、工学研究科の中の物質科学研究に関わる9つの専攻から学生を選抜。従来の研究科専攻の専門課程に加えて、独自の講義や実践的なプログラムを通して、ほかの学問領域や研究手法を学ぶ。
専門領域を深く掘り下げることを中心としてきた従来の博士課程教育だけでなく、多様な研究領域に触れる中で複眼的な思考や俯瞰的な視点、異なる専門領域と協働する力や対話力などを養うことが狙いだ。
日立製作所理事で、ヘルスケアビジネスユニットのCSO&CTOを務める長我部信行氏は、産業界で求められる人材についてこう語る。
「科学技術が高度に発達し、便利なモノがあふれる現代。モノづくりや技術開発において重要なのは、世の人々が本当に求めているものは何か、社会の課題やニーズを的確に捉えることです。高い専門性を前提としつつ、自ら課題を発見し、仮説を立ててそれを検証・実行する力や、異なる研究分野と相互理解を深め、ともにプロジェクトを進めていける人材は企業でも必要とされています」続けて長我部氏は、「本来は博士人材こそ、そうした能力に秀でているはずだ」と力を込める。