「Suica使えない」東京-修善寺間の落とし穴 東京五輪時には外国観戦客で混乱必至?

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五輪自転車競技が行われる伊豆市の関係者は、「首都圏から来る観戦客が三島までSuicaで来られないのは大きな問題。加えていずっぱこがICカード未対応で、費用の問題もあり改善も難しそうなのがつらい」と現状を憂う。特に、丹那トンネルでSuicaとTOICAの境界が切れることについて、「Suicaの適応範囲を三島まで引っ張るにはどうしたらよいか、と鉄道各社に掛け合ったら、数億円の投資が必要と言われた。これでは競技当日にどんなことが起こるか、本当に怖い」と頭を抱える。

「いずっぱこ」の鉄道むすめ・修善寺まきの。できればSuicaを使って会いに行きたい(筆者撮影)

試しに筆者はサイクルスポーツセンターで11月18~19日に開かれた全日本自転車選手権に合わせて、現地を訪れた。

その際、修善寺行き踊り子号に乗車。Suicaで乗るとどのような対応となるか試してみた。前述のような理由で何らかの精算が必要となる訳だが、意外と段取りはスムーズだった。

車掌は検札の際、Suicaの入場記録を消去。その上で発駅から目的地までの通し乗車券(修善寺駅までも可)車内補充券で発行してくれた。これなら降車時に面倒なく改札を通れる。

この日の踊り子号の乗車率は半分程度だったが、それでも検札時における特急券の発券はかなり手間がかかり、「小田原に着くまでに車掌室に戻らないと。ドアを開けるまでに間に合うかなあ?」と筆者にこぼしていた。

これが五輪の競技開催当日だったら、どんなことになるのだろう。通路にも人が立って検札や精算どころではない。さらに、外国人観戦客に状況を説明しておカネをもらうのはかなり骨の折れる作業になると想像する。

車掌にしてみたら、同じ踊り子号でも伊東線経由伊豆急下田行き編成では特急料金だけの徴収という、割とシンプルな業務だけで終わるが、それと比べると修善寺行き編成での検札作業はことのほか面倒なことになるわけだ。

ICカード境界問題の解決には?

現在、交通系ICカードのシステムは、SuicaやICOCAなどそれぞれの利用可能エリア内で閉じた格好となっている。これを、エリアまたぎ可能にするとしたら、システムの改修に巨額のコストがかかる。しかし、もう少し簡単にエリアまたぎ問題を解決する方法はある。

オランダにある非国鉄路線への乗り換え用タッチセンサーの例。異なる運営会社同士の行き来が簡単にできる(写真:PPP/Wikimedia Commons)

たとえば国鉄全線がICカードの「1つのエリア」になっているオランダでは、同じホームから非国鉄各社の列車が発着することがある。そうした場合、利用客は非国鉄の運営会社が設置したタッチセンサーにICカードをかざして乗り込むようになっている。

このような乗り継ぎ駅では、国鉄と非国鉄のセンサーが仲良く並んでいて、乗り換え時も数秒で2つのセンサーにタッチできる。踊り子号や普通列車が頻繁に乗り入れ、JR東日本管内への出入り客が多い三島や沼津では、オランダの例のように「Suica用センサー」をホームに設置することで、利用客はもとより駅員の手間が大幅に解消すること間違いない。

五輪会期中には、日本の事情を知らず、事前知識も言葉もわからない数万人の「群衆」が毎日のように動き回る。日本は高い技術があるにもかかわらず、資金の問題や従来のしきたりを理由に観戦客がスムーズに動けないような事態があってならない。関係する人々が知恵を出し合い、最善の方法が生み出されることを期待したい。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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