私の若い友人に、60人ほどの社員を要した建設会社の社長がいます。彼は、もう12年前から毎年、社員に、方針、すなわち「基本理念と具体的目標と最終目標」をまとめ、『経営の羅針盤』という冊子にして配布しています。
もちろん、基本理念は「貫く棒の如く」変わっていませんし、最終目標も30年後には「地域に最も喜ばれる会社・日本で最も喜ばれる会社」を掲げています。冊子を見ると、経営理念、経営方針、経営目的、達成手段、行動指針などがコンパクトに書かれていますが、社員はこの社長の方針を基に仕事をしているのですから発展しないわけがありません。事実、この12年間で、売り上げも利益も大幅に伸びています。なにより、社員がきびきびと仕事に取り組み、工事現場の近隣からも非常に評判がいいということです。
そういうことで、市の土木局から優秀工事表彰を受けました。そのときの彼の話は、「社員への感謝の言葉」「近隣の住民の方々への理解あればこそ」などを語っていました。とりわけ「ウチの社員は優秀ですから」という言葉が印象深く、私の脳裏に残っています。とはいえ、彼が方針を出すことによって、優秀な社員が、より優秀になったということでしょう。ですから、方針(経営理念、具体的目標、最終目標)を提示した、その若き社長が優れていたと私は思うと同時に、「方針」を明確に社員に提示することの重要性、それを実行することの大切さをあらためて痛感したものです。
方針を示すと社員の意識が変わる
方針を明確にして、誠実に取り組み、成長路線に乗った会社をもう一つ、ご紹介しましょう。東京の四谷にある、デザインとソフトウエア開発を行っている会社です。この会社は100年以上続いていますが、私の若い友人が社長になるまでは、まったく方針がなかった。いわば、「その日その日」の経営をしていたようです。
しかし、それでは、これからの経営は難しいのではないかと考えて、数年前に社長自身が社是、企業理念、そして「30年ビジョン」を考え、社員に提示しました。その後数年で社員の意識が変わり、力強く仕事に取り組むようになったのです。すると業績にも表れて大いに発展、職場も狭くなり、別の大きなビルに移転し、そのビルのワンフロアで新たに活動を展開しています。幹部の人たちの表情もずいぶん明るいと感じました。
方針を明確にすることがいかに大切か、経営者は深く認識しておく必要があると思います。
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