安倍首相、消費増税は凍結しましょう 増税=超絶デフレ政策なら、アベノミクスは台無しに

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それに対して異次元緩和は、名目GDPの成長を手助けすることになり、長期の財政再建に向けた強力な援軍となるだろう。2%程度の安定したインフレ環境であれば企業収益が増え、資産価値が増え、取引も活発になる。法人税も所得税も住民税も取引税も相続税も増えるだろう。デフレにするから税収が減って安定しなくなるのである。適度なインフレを続けることができれば、消費税アップは必要ないはずだ。

消費増税=「超絶デフレ政策」なら、アベノミクスは台無し

しかしここで「消費税引き上げ」という超絶デフレ政策をやってしまったら、異次元緩和も国土強靭化も、台無しである。

消費税は一見、安定した税収をもたらすように見える。しかし消費や投資にブレーキをかけ、企業収益を減らし、資産価値(株価や不動産価格)を下げ、所得税から相続税まであらゆる税収を落ち込ませてしまう「マイナスの切り札」である。
日本の「失われた20年」は奇しくも消費税の歴史と軌を一にしている。

欧州経済が日米に比べていまひとつダイナミズムに欠けるのは、付加価値税が高いことも影響しているのではないか。消費税引き上げは短期的な安定税収を得る代わりに、最も大事な経済成長や将来の税収を犠牲にしてしまうと私は考える。

異次元緩和はいつか終わる。しかし引き上げられた消費税は、二度と引き下げられることはない。直前に駆け込み需要は増えるだろうが、人々はその後また生活防衛のために貯蓄に励むはずだ。

そのときになって「なぜ異次元緩和や国土強靭化政策の効果が出ないのか」「なぜ消費や投資が増えないのか」と聞かれても困ってしまう。自分でブレーキを思い切り踏んでいるのだから、それ以外にどんな政策をしても前に進まないのは当たり前である。

そもそも異次元緩和は「通貨価値を下げ、資産価値を上げる」政策だ。それで真っ先に利益を得るのは企業と投資家であり、生活者への恩恵はどうしても後回しになる。それなのに、生活者から取る消費税を早々と上げてしまうのは、政策の整合性・公平性の観点から言っても容認できるものではない。

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