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仕事のモチベーションを上げる「大胆戦略」 『嫌われる勇気』の岸見一郎氏と
「第3回グッド・アクション」受賞企業に学ぶ

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全社員の投票でボーナス額を決定
3C評価制度で「立ち止まる力」が養われた

情報検索プラットホーム開発企業のフォルシアでは、「3C(スリーシー)評価制度」と呼ぶ全社員による評価制度を実施した。具体的には、特別賞与の原資を公開した上で、自分以外の全員に分配する設定で全社員が全員の賞与額を記入。その結果を実際の支給額を決める際にも重視するという取り組みだ。

同社の取り組みについて、若新氏は「仲間に対する新しい視点ができた」点を評価する。実際、同社では制度導入後、光が当たりづらかったエンジニアの成果も正しく評価されるようになったという。

慶應義塾大学特任講師、株式会社NewYouth代表取締役
若新雄純

「人が人を評価するという評価制度は僕達人間社会にとって永遠のテーマであり、非常に曖昧でインチキな部分も含んでいます。しかし今回の例では、他部署にいる仲間についてあえてしっかり立ち止まって考えるという機会や、気づきを生む余地が生み出されました。完璧な評価制度は存在しないと考えていますが、常に試行錯誤し続けることは重要でしょう」

こうした新しいアクションは、成果ばかりを気にしていては起こせないと若新氏はいう。

「信頼できるかどうかも大きいと思うのです。『これを社員にやらせて無茶苦茶な評価をつけられたらどうしよう』など考え出せば、なにも生まれなかったはずです。この企業では基本給与への評価方法は従来のままに、特別賞与だけに360度評価を実施したというのも、ちょうどいいバランスだったのだと思います。『ここは試していい』という出島のような特区があると、積極的な取り組みを後押ししてくれるはずです」

この取り組みによってフォルシアは全社員の"共同体感覚"を高め、モチベーションUPにつなげた。

「モチベーションUPで重要なのは、自分が作る側に関わっているかどうか。『一人ひとりが経営者になったつもりで……』というよく耳にする言葉は、実際は不可能な状況ですのでインチキなのですが、社員であっても当然制度や仕組みを作る側にはなれます。立ち止まったり、遠回りすることになっても、自分ゴトとして仕事に関わることができれば、モチベーションが上がるのではないでしょうか」

HRテックが生んだ科学的アプローチ
「人材育成エンジン」が最適解と納得解を生む

主にインターネット広告事業を手がけるセプテーニグループの持株会社セプテーニ・ホールディングスは、「人材育成エンジン」を中枢に置いた科学的人材育成を実施。800項目以上のデータをもとに人材データを分析し、機械学習等を中心に蓄積されたデータを解析することで、採用や社内適応、育成、戦力化を図っている。

「正しいデータに裏付けされた評価は、最適解でもあるし、納得もできるのです」と話すのは、藤井氏だ。

リクナビNEXT 編集長
藤井 薫

「人材の配置や育成は、これまでKKD=勘・経験・度胸で判断されていましたが、これからはKDD=Knowledge Discovery in Databaseの時代に入ります。データの中から新たな知見を発見するという意味です。もちろん正しい結果を生むためには、インプット、プロセッシング、アウトプットというデータにまつわる3つのプロセスを正しく行う必要がありますが、同社の『人材育成エンジン』のコアとなっている相性の分析は、組織の最適化を支援する会社であるヒューマンロジック研究所が提供するFFS理論を用いて行われており、非常に丁寧にやられているのではないでしょうか。こと人事に関しては、最適解だけでなく本人が納得することも大事。同社ではマネジャーをどんどん巻き込み、システムの有効性を地道に検証することで『意外と使えるね』という社内評価を獲得していったといいます。そうした地道さも評価したポイントでした」

納得感のある「人材育成エンジン」による正しい評価を受けられれば、過剰な承認欲求に萎縮することなく、より自由に仕事に取り組める。

「多くの研究でも示されていますが、モチベーションを高める要素のひとつは、自立性。クルマにたとえれば、自分でハンドルを握ることです。リスクがあっても、助手席で不満をつぶやいているだけより、よっぽど乗り心地がいいからです。また、フィードバックも重要です。カーナビのようなもので、運転した結果がどうなったのかを常に示してくれると、自分が上げた成果がよくわかります。フィードバックがあるから、『今度はこっちの道を試してみよう』とチャレンジできます。データを前に「自主性とフィードバック」を適切に得られる環境が、セプテーニ・ホールディングスの組織作りにつながっているのだと思います」

少日数勤務や在宅勤務を認め
生産性UPで年間売上が増加

オンラインゲームなどの開発、運営、販売を行っているシグナルトークは、同業他社と同じく長時間労働の常態化に悩まされていた。企業の将来を憂いた人事担当者は、コアタイム以外の時間帯は自由に出勤・退勤できる「成果報酬型」と、1日8時間の実働時間に対して基本給を支払い、残業発生時には時間外手当も支払われる「時間報酬型」の選択制度を提案し、後に制度化。さらに社員からの提案で、個々の事情に合わせた少日数勤務や在宅勤務を認める「FreeWorking制度」も導入した。

守島氏はこの取り組みについて「働き方改革の、一種の雛形」だと述べる。

一橋大学大学院商学研究科教授
守島基博

「リモートワークや裁量労働制だと、収入減になってしまうのではないかと恐れる声は多いものです。育児や親の介護に時間を使いたい気持ちがある一方、それによって収入が減ってしまうのにも不安が残る。しかしこの企業では、成果型と時間型の2つの報酬体系を用意したところが優れているところ。労働時間を減らしても成果を出せば報酬が下がらないので、モチベーションも上がります。働く人が、働く時間を自分に取り戻すよい取り組みだと思います。社員の中から出た制度改革の起案に、社長が積極的にコミットメントしたのもすばらしかった」

注目すべきは、制度を導入したあとの同社の年間売上が、下がるどころか上がっていることだ。社員にとってより働きやすい環境が、企業の利益にもつながるという好例だ。

「社員のモチベーションを高める基本は、不安を取り除く、困りごとを解決してあげる姿勢を示すことです。『24時間戦えます』という昔の働き方はいまや不可能で、働く人にはいろいろな事情を抱えています。企業としてその解決に寄り添うことが、モチベーションUPにつながるのだと思います」

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