仕事のモチベーションを上げる「大胆戦略」
『嫌われる勇気』の岸見一郎氏と
「第3回グッド・アクション」受賞企業に学ぶ
岸見一郎氏に聞く
モチベーションUPのヒント
青年と哲人の対話形式で「アドラー心理学」の核心を解き明かしていく『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)は、シリーズ累計206万部超の大ベストセラーだ。心の悩みの原因を追求し、今の時代で幸福に生きるための道標を示した。
「アドラー心理学」のもとで、仕事のモチベーションとはどのようにとらえられるのか? 著者のひとりである岸見一郎氏は、「"貢献感"がモチベーションの源にある」と解説する。
「給与を得て生活を維持していくことが労働の基本的な目的ですが、それだけで強力なモチベーションにはなり得ません。人間は日々の糧を得るために生きるのではなく、幸福に生きるために働くからです」
アドラー心理学でいう幸福とは、"他者を仲間だとみなし、そこに「自分の居場所がある」と感じられる"ことで生まれる"共同体感覚"を有した上で、"「わたしは誰かの役に立っている」という主観的な感覚"である"貢献感"を得ることにあるという。
「自分の仕事と社会とのつながりが見えづらい場合もあるかもしれませんが、どのような職種でも会社でも"共同体感覚"を得ることはできます。すべては見方の問題に過ぎません。それに、共同体や組織に受動的に所属するのではなく、自分には共同体を変えていく力があると知ることも大切です。なにかできることはないか?という視点を持ち、人任せにしない。ひとりの力は、意外と大きいのです。こうして他者への貢献に想いを巡らすことで"貢献感"が高まり、ひいては幸福に、モチベーションUPにつながっていくと思います」
一方の管理職や人事部は、社員に"共同体感覚"や"貢献感"が養われるよう取り組むべきだと話す。
「他社との競争が資本主義の原理となっているからこそ、社内は『安全な場所』だと感じてもらうことも大切です。社内でも『余計なことをいえばどうなるかわからない』という雰囲気では組織への所属感が実らず、"共同体感覚"も"貢献感"も希薄です。包括的なプロジェクトを行う際も、『社員のみなさん』ではなく、一人ひとりに話しかけるイメージで取り組みましょう。また、『ありがとう』は非常に有効な言葉。自分が貢献できているのだと明確になりますから、それだけでも社員のモチベーションは変わります」
背中で語るというのも有効な手段だと、岸見氏は説く。給与のためだけではなく、喜びや意欲に満ちあふれて仕事する姿勢は、自ずと部下たちに伝わっていく。アドラーも「勇気は伝染する」といっている。
「『グッド・アクション』で取り上げられた企業もそうだと思いますが、結果的には大きなアクションとなっても、最初はほんの小さな一歩からスタートしたはずです。最初から、なにもかも変えるわけにはいきません。すごくささいなことでも、やがて大きな波となって組織を変えうる力となります。まず、自分が変わること。自分は、自分しか変えられないこと。そうした気づきが大事です」
いま企業はどのように取り組んでいる?
「第3回グッド・アクション」表彰式に潜入!
リクルートキャリアが運営する転職情報サイトのリクナビNEXTは、2月7日に「第3回 グッド・アクション」表彰式を行った。
「グッド・アクション」とは、各職場が独自に実施している人材育成やコミュニケーション活性化策、そして社員のモチベーション向上などにつながる取り組みに光をあてる企画だ。開催初年の2014年には日本の生産年齢人口が32年ぶりに8,000万人を割り込み、生産力の維持や確保を目的とした働き方の変革が急務となったことを背景に、各職場のヒントになる取り組みの発掘を目指したものだ。
審査員は、一橋大学大学院商学研究科教授の守島基博氏、SAPジャパン株式会社常務執行役員人事本部長、横浜市政策局男女共同参画推進担当参与、NPO法人GEWEL副代表のアキレス美知子氏、慶應義塾大学特任講師で株式会社NewYouth代表取締役の若新雄純氏、そしてリクルートキャリア・リクナビNEXT編集長の藤井薫氏の4名。藤井氏は主催者挨拶の中で「働き方改革の実現。そのためには、国の支援や企業の推進も重要ですが、主役はあくまで現場にいる個人。そして、個人が集まった職場なのだと思います。それこそが未来の“はたらく”を切り拓いていきます」と述べ、個人のモチベーションUPを含む「グッド・アクション」が企業や社会全体を活性化させるとの考えを示した。
会場には「グッド・アクション」に選ばれた8つの取り組みの代表者が呼ばれ、各取り組みを紹介するとともに、そのチャレンジ性や独自性などを講評された。
次ページからは、特に仕事のモチベーションUPへとつながる施策を実施した4つの取り組みについて、審査員のコメントともにご紹介する。