「イケイケ相場」は何をきっかけに崩れるのか 「2017年の日経平均2万円超」には異存なし

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さて、後で述べると語った、市況と実体経済等との比較をしてみよう。まず米国株価については、予想PERは近年のレンジ(推移の範囲)を完全に上抜けてしまっており、割高感が強い状況だ。これまでは、PERで割高感が強まると、昨年7~8月や今年1~2月のような、株価の調整が引き起こされてきた。

実は今年8月もPER面からは割高に過ぎたのだが、緩やかな株価の調整という展開となって、PERは通常のレンジ内に一時は戻っていた。現在のPERが示唆する米国株の割高感が、これからも調整されないまま推移するとはとても予想できない。

足元の円安は「2割以上」、いずれドル高是正へ

また米ドルも、長期的な購買力平価(日米の物価から推し量った、米ドル円相場の妥当水準)からの乖離率をみると、今は2割以上円安に乖離した状況にある。過去に2割以上円安方向に乖離した時期としては、1985年2月が挙げられる。

この時は、その後1985年9月にプラザ合意が成って、当時のG5が協調して米ドルの押し下げが行なわれた。次が昨年6月であり、やはりその時の120円超の米ドル高水準は長期間維持できていない。とすれば、足元の2割以上の乖離は、過去と同様に長く維持することは不可能で、早晩米ドル安・円高方向への揺り戻しがあると見込むべきだろう。

前述のように日本株自体は、予想PERなどでみて割高とは言えないが、米国株と米ドル相場が割高さの解消に向かい下落すれば、日本株が無傷とは見込みがたい。

ただ、行き過ぎた相場が現在さらに行き過ぎているものが、今週もっと行き過ぎになり、短期的に上値追いが生じることは十分ありうる。しかし、いずれ日本株の調整が進むと見込み、その中に今週を位置づけたい。日経平均株価の今週のレンジは、1万8600~1万9300円を予想する。

 

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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