電通過労自殺問題、本質はどこにあるのか 残業規制を改革の俎上に載せるべき
[東京 4日 ロイター] - 日本の一流大学を卒業し、将来有望と見られていた高橋まつりさん(当時24)は昨年4月、同国有数の広告代理店である電通<4324.T>に入社した。同社の職場文化は、激務が求めれることで知られている。
入社から9カ月後、高橋さんは飛び降り自殺した。ソーシャルメディア上では、高橋さんの過酷な労働時間や上司の嫌がらせを示唆する言葉に対する怒りが巻き起こった。
日本の厚生労働省は先月、高橋さんの自殺について、過労を原因とする労災と認定。電通社内で長時間労働がまん延しているのかどうか立ち入り調査を行った。
新入社員に対し過度の時間外労働を強要
日本では、労働基準法第36条によって、通称「36(サブロク)協定」と呼ばれる労使協定を締結し届け出た場合には、協定で定める範囲内で1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて労働させることが可能となっている。
協定の範囲内であれば、割増賃金や時間外労働の限度は、雇い主と大抵はおとなしい労働組合の裁量にまかされている。多くの日本人の目には、高橋さんの死は、こうした現状の悲劇的な結果として映る。
こうした現行法の抜け穴が改善される可能性も出てきている。安倍晋三首相は9月、第1回「働き方改革実現会議」を開催し、広範囲に及ぶ雇用改革に着手。時間外労働に対し、企業により厳しい規制を求めることも検討の対象となっている。
「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表は、現行法では、月45時間の上限を超える水準で時間外労働を設定することが可能だと指摘。労働組合も企業側のそうした設定に合意するため、組合にも責任があるとの見方を示した。
こうした支援団体によれば、企業は社員、特に新入社員に対し、過度の時間外労働をしばしば強要するという。