いまも、スケジュールは紙の手帳に手書きで管理しているという人は多いのではないか。長年使っていて手帳とペンに愛着がある、パッと見で予定がわかる、予定を書き込んでいくのが楽しいなど、そこにはデジタルに取って代わられることのない良さがある。
仕事でアイデアを絞り出す際の走り書きもしかりだ。自ら手を動かすことが刺激となり良いアイデアが浮かぶ、思いついたアイデアをつなげて図にすることも手書きならば自在である。中には「手書きで手紙を送る」ことを習慣とする粋なビジネスパーソンもいる。メールが一般的なビジネスシーンだから、感謝の気持ちを伝えたいなど特別な場面での効果は絶大だ。たとえ、パソコンでつくられた形式的な文書であっても、末尾の署名を手書きにするだけで丁寧さが伝わるなど、いまや手書きというだけで特別感を演出できたり、時にその人柄をも伝える大切な機会となっている。
だからこそ、書くものにもこだわりたい。いつ書くか、どう書くか、とあわせて「何で書くか」は自分を表現できる大切な機会だからだ。手元は視線が集まりやすいし、自分のこだわりを見せるアクセサリーとしても最適である。何より、選び抜いたこだわりの筆記具で文字を書くのは気持ちがいい。
みなさんは、高級筆記具ブランドと聞いて、思い出すブランドはあるだろうか。1846年創業、今年で170周年を迎えるクロスは、その中でも長い歴史を誇る米国のブランドである。コニカルトップと呼ばれる円錐形の天冠に大きな特徴があり、胸ポケットからのぞくそれはステイタスの象徴とも言われてきた。
そうしたクロスの代表的なモデルと言えば、やはり「クラシック センチュリー」だ。創業者が金・銀細工職人のクロスならではの精巧な技術によって生み出された滑らかなスリムボディを、誰もが一度は目にしたことがあるだろう。1946年の発売当初から、10金張、14金張、スターリングシルバーなど、ジュエリーに使われるような素材を筆記具に取り入れてきたのが大きな特徴だ。以来70年で1億本を売り上げ、いまや高級ボールペンの定番として世界中で愛されるクロスのシンボル的存在になっている。
このたび創立170周年を記念して発売される「21stセンチュリー リミティッド・エディション」(万年筆96万円、ボールペン60万円)は、これまでで最もラグジュアリーなモデルだ。1946年に発売された初期「センチュリー」のデザインを継承しながらも、ボディ全体に21金をぜいたくに使用し、コニカルトップにはダイヤモンドを配すなど、新しい要素も盛りこまれた魅力ある1本に仕上がっている。もう一つの記念モデル「クラシック センチュリー 170周年ギフトセット」は、スターリングシルバー2万3000円、14金張2万5000円を特製ペンポーチ付きで買うことができるのも嬉しい。
「手にした時の存在感がほしい」という人には、「クラシック センチュリー」の発売から50年を経て登場した中軸の「センチュリーII」や、太軸の「タウンゼント」がおすすめだ。
「センチュリーII」は、男女問わず人気で、今年の春に登場した新色「トランスルーセントブルーラッカー」は透明感のある爽やかなボディで特にオススメしたいモデルである。一方、「タウンゼント」は、創業者の息子であるアロンゾ・タウンゼント・クロスの名を冠したモデルだ。
彼は、シャープペンの先駆けとなった「繰り出し式ペンシル」やボールペンの原型となった「スタイログラフィックペン」を発明し、筆記具のデザイン、機能の分野で26以上の特許を取得して、当時の筆記具に革命的な影響を与えた人物だ。筆記具のスタイルを刷新し、高級筆記具という新たな分野を生み出したそのクラフツマンシップは、クロスで170年間脈々と受け継がれてきた。この彼の名に由来する「タウンゼント」が、実はいま男性に最も人気のあるモデルである。
なぜか――。それは、まさにステータスの象徴としてふさわしい魅力的なストーリーを持っているからかもしれない。米国の公式行事などでも使用されたことで知られ、歴代のアメリカ大統領から愛されてきたのである。アールデコ調の優美なラインとキャップのダブルリングが特徴で、その品格がひと目で伝わる重厚感のあるデザインが、持つ満足と使う楽しさを同時に満たしてくれる。
「何から入るか」は好みによるが、クロスの万年筆、ボールペンを持っているだけで、書くことが楽しく、特別な時間になる……。自分の格をも上げてくれる1本だけに、仕事でも一段上をいく成果を手に入れられることだろう。
クロス・オブ・ジャパン
(撮影協力:TENOHA DAIKANYAMA)