1万7500円割れは最初の押し目買いの機会だ 一気に顕在化した株価下落と円高リスク

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6日の株価下落の原因の一つには、北朝鮮の核実験がある(写真:伊藤真吾/アフロ)

年初の株式市場はまさに「波乱の幕開け」となった。4日の日経平均株価は昨年末比で582円の大幅安となり、5日も76円安、6日も182円安と、大発会から3日連続での下落となった。この動きが今年の株式市場の動きを示しているとは言えないが、少なくともこれだけの下げになったという事実は、株価の上値の重さを明確に示しているといえる。昨年来、筆者は2016年のリスクは「円高、株安、コモディティ高」と指摘してきたが、少なくとも最初の二つは顕在化しつつある。

フシ目の120円を割り込んだドル円

今年初めての原稿を執筆するに当たり、「出来るだけ明るい話を」とも考えたが、これまで本欄で示してきた悲観的なシナリオが現実のものになりつつあり、これは難しいとあきらめざるをえなかった。

6日の日本株下落には、北朝鮮による水爆実験報道の影響もある。しかし、この報道がなくても大幅安は避けられなかっただろう。証券業界では「年前半高、年後半調整」の見方が大勢を占めていたが、「今年の日本株は上値が重い。中小型の材料株を中心に取引すべき」とし、大型株中心に指数は上昇しづらいとの認識が広がりつつあるという。

専門家と言われる彼らも見方を変えざるをえないほど、地合いは悪いのかもしれない。中国株の不安定さや米国株の下落も日本株の重しになっているのだろうが、根本には円高による企業収益の低下リスクがある。ドル円はすでにフシ目の120円を割り込み、118円台に突入している。このままの流れでいけば、昨年来本欄で指摘してきた「最低でも112円、メインシナリオで108円、最大で102円の円高」となる可能性がさらに高まりそうだ。

世界的な株安基調の強まりやサウジアラビアとイランの国交断絶などの地政学的リスクの台頭により、リスク回避通貨としての円が買われやすい地合いになっている。この点では、ドルも買われやすいため、結果的にクロス円の下落が激しくなっている。ユーロ円は昨年末までのユーロドルのショートの巻き戻しが終了したもようで、再度売りなおされている。

その結果、対ドルだけでなく、対円でもユーロ安が進んでいる。また資源国・新興国通貨は、中国不安を背景に動きが芳しくないため、結果的に対ドルで売られ、同時にクロス円での下げも大きくなっている。このように、円独歩高になりつつある状況は、今後の世界の金融市場の不透明感を示している可能性がある。

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