「中身のない政策」と「口先介入」は効果なし 市場に伝わらなかった日銀の政策意図

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市場関係者は政府や中央銀行の政策に逆らってはいけないことを経験から学んでいるが、「その政策が正しい」ことが条件だ(撮影:今井康一)

12月18日の日銀金融政策決定会合では、上場投資信託(ETF)の買い入れを3000億円増やす「補完措置」の導入が決定された。日銀はこれを追加緩和ではなく、今後追加緩和を行う際に障害をなくすことを目的としているが、あまりにわかりづらい説明である。追加緩和の限界説が流れる中、その懸念を払拭したかったとの意図が見え隠れする。しかし、この政策の導入は、日銀の限界を市場に示しただけに終わったといえそうだ。

本質とは関係のない値動きが増えている

これはいったい何を意味していたのだろうか。少なくとも市場においては、非常に「残念な政策」になってしまったのは間違いない。この日の金融政策決定会合では、量的緩和の拡大などの追加的な政策はもともと期待されていなかった。しかし、通常であれば政策の決定内容が伝わってもよさそうな時間に何も発表がなかったことが、混乱の始まりだった。

筆者は当日、12時30分を過ぎても発表がないことから、いやな予感がしていた。案の定、13時近くになると、機械的かつ自動的な取引が先物市場で行われ、あっという間に買い上げられ、日経平均株価は2万円に乗せようかという急騰となった。

しかし、実際の発表がなかったので、ここでは動くことはせず、冷静に市場を見ていた。その後、発表された政策が追加緩和策ではないとの報道をきっかけに一転して急落し始めたので、以前から保有していた売りポジションに、ある水準で追加的に売り乗せた。結果的に1万9000円を割り込んだため、この日の取引は最終的には非常にうまくいった。しかし、正直なところ、このような展開は想像しておらず、値動きの早さに対して冷静だった自分にむしろ正直驚いたというのが本音である。

このように、今の市場は本質とは関係のない値動きをするケースが増えている。今回のようなケースでは、政策の内容を見極めてから動くべきであり、やはり慌ててはいけないということだろう。いずれにしても、今回のケースでは、日銀の政策意図がうまく伝わらなかったことに大きな問題がある。追加緩和ではないことを冒頭に明確に示せば、市場の失望は大きなものにならず、市場の混乱も抑制されたはずである。

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