さまざまな経済メディアを見ていると、エコノミストや機関投資家を含めた市場関係者の間では依然として、日米の金利差拡大を根拠にして「円安が継続する」という見通しが多いようです。某銀行が主催する経済講演会で、某外資系証券のエコノミストの話を聞いてきたばかりですが、「米国の利上げにより円相場は130円を目指すだろう」と予想されていました。
ところが私は、円相場を予想するうえで重要なのは、さまざまな要因を俯瞰したうえで総合的に判断することであると考えております。日米の金利差拡大という要因だけで円安が続くと予想するのは、あまりに視野が狭い判断であり、歴史的な見地を軽視していると思うのです。
円安トレンドはなぜ終わるのか
拙書『これから日本で起こること』および『経済はこう動く〔2016年版〕』では、米国の利上げをきっかけに、いよいよ円安トレンドは終わるだろうという見通しを述べさせていただきました。
その見通しの根拠となっているのは、経常収支や金利差、購買力平価、過去の歴史などであります。ドル円相場を短中期的に左右するのは、日米の経常収支や金利差であり、長期的な流れを左右するのは、何といっても購買力平価を置いて他にはないのです(詳しくは『円安終焉へのカウントダウンが始まった』(12月14日)を参照してください)。
さらには、その見通しを補完するために、市場の歴史を参考にする必要もあります。米国が1999年と2004年に利上げを開始した後、当時も日米の金利差が拡大したにもかかわらず、円安ではなく円高に振れたという事実を軽視してはいけません。いずれのケースでも、短期で見ると利上げ開始後は円安が進んでいたのですが、中長期で見ると大幅な円高に振れてしまったのです。
これらの歴史的な事実は、市場が米国の利上げを相応の期間をかけて織り込みに行っていた証左であるといえるでしょう。FRBは今回の利上げにおいても、1年にも渡って慎重に市場へのアナウンスを行ってきたので、市場では金利差はほとんど織り込まれていたと考えるのが自然であるといえるわけです。
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