「今後、社内であなたに与えられる仕事はありません」
会社から突然こう言われてしまったら、途方に暮れてしまう人も多いだろう。仕事がなくても出社するだけで給料がもらえる、「働かないオジサン」としてのポジションを残してくれるなら、ある意味、素晴らしい優良企業だ。しかし、グローバル市場での競争が激しい昨今、そんな砂糖にハチミツをかけるような話はレアと言える。
12月9日、日本IBMの50代の男性社員が、退職勧奨を繰り返されたことでうつ病になり、労災認定を受けた。原告代理人を務める水口洋介弁護士は「退職勧奨で労災が認められることは、非常に珍しい」と話す。上司は、この面談の席で、「勧奨を受け入れなければ、解雇されることになる」といった発言をしていたことが、認定の大きなキーになったようだ。
「自主的な」退職を実現するためのノウハウは?
勧奨の場で、「解雇」という言葉を使うことはタブーだ。日本の労働法では、会社からの一方的な雇用契約の解消は、極めて例外的な場合でないと認められない。「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」(労働契約法16条)は、解雇権の濫用として無効となる。だから、会社としては合意による「自主的な」退職を目指すことが筋なのだが、こうしたことが徹底されていなかったのだろう。
今回は、日本IBMがかつて用いていたという、「退職勧奨マニュアル」の実物を入手した。本体は26頁、添付資料は13頁に及ぶ。中身を読んでみると、法に触れずに目的を達成するためのノウハウが、盛り込まれている。会社が「合法的なリストラ」について、どのような戦略を持っているのか、明らかにしていこう。
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