日本IBM「社外秘リストラマニュアル」の全貌 用意周到な人員整理に働く側は対抗できるか

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このマニュアルは、日本IBMの管理職向けの研修で配布されたものだという。文体や書面の内容・形式などから考えると、社内で作成されたものではなく、外部のコンサルティング会社から提供されたもののようだ。

まず、冒頭に「この小冊子は、司法の判断等を十分考慮して、法を遵守し、かつ企業の意図の実現を図るべく作成されております」と明記。「勧奨」とは、お奨め、お願いのことであり、これを行うこと自体は当然適法となる。

退職勧奨マニュアルの添付資料

民法や労働基準法の条文、雇用契約の概念図などを用いて、法的知識について解説がされており、過去の判例なども引用されている。また、面談の内容が録音されていることも想定しておくように、と書かれており、裁判で証拠となることも視野に入れている。法律の専門家が作成に関わっていることは明らかだ。

会社は「厳しい現実」を伝える「よき理解者」になる?

マニュアルでは、退職勧奨は2つのポイントから進める、としている。1つは、その人の能力、会社の状況を考えると、現組織において職務の継続はできないという「厳しい現実」の指摘をすること。もう1つは、今後の転職相談には親身に接することで、「よき理解者」という関係を確立すること。まさに「アメとムチ」の考え方だ。そして、説得をするためには、相手の立場に立つことが重要ということで、リストラ対象者の一般的な心の動きまで図解化している。

否定(私には関係ない)→抵抗(何で私が?他に誰が?)→探求(職はあるだろうか?当面の生活は大丈夫だろうか?)→決意(不安は残るが、チャレンジしてみよう)という形で、リストラ対象者の気持ちは揺れ動いていくという。担当者である上司には、これに対応する形で、「明確な説明」「十分な傾聴」「導き」「激励」を行うことが求められる。

 

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