ソニーは、なぜ延々とリストラを続けるのか 「切り捨てSONY」で描きたかったこと
苦しくてもその仕事に目的や意味があれば、人は耐えることができる。残業や徹夜続きでも、サラリーマンは何とか我慢して生きていくものだし、時には、「楽しくてたまらない」という者も現れる。
では、「ここで君にはやるべき仕事はない。辞めるまで給料は出す」と上司に告げられたらどうだろうか。
「頑張る必要はない。努力するとしたら、この会社を出ていく努力だよ」と。
「リストラ部屋」の人々はそんな通告を受けて、「キャリア開発室」という名の部屋に収容されている。表向きは「社員がスキルアップや求職活動のために通う部署」と説明されていたが、実際は仕事だけでなく働く意味や目的を奪われ、会社から出ていくことを期待されている面々だ。
そんな彼らを訪ね、聞き取りを始めたのは2012年秋のことである。
「わが社はリストラをしない」
ソニーの友人たちが次々にリストラの対象になっていくのを見て、私は不思議に思っていた。ソニーは、創業者の一人である盛田昭夫氏が、「わが社はリストラをしない」という趣旨の宣言をしていた会社だったからだ。
これは近著『切り捨てSONYリストラ部屋は何を奪ったか』にも記したことだが、志の高い大企業経営者が従業員に寄り添う時代があったこと、そして後継者はその創業者が亡くなると、時として十分な説明もなく終身雇用の方針を大転換することを思い起こしていただきたいので、あえてここにも書く。
盛田氏は欧米の経営者を前に、しばしば「経営者はレイオフの権利があるか」と訴えた。その講演の一部を、彼の著書『21世紀へ』(WAC)から引く。
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