日本人は「節約命」の考えをそろそろ捨てよう 藤野英人×ちきりん、デフレの稼ぎ方を語る
ちきりん:藤野さんの本は投資指南というより、生きるのに必要な考え方が書いてある本が多いですよね。新著である『投資バカの思考法』も、とても本質的なことが書かれていると思いました。
藤野 英人(以下、藤野):ありがとうございます。
ちきりん:たとえば、「損切り」は投資に不可欠なスキルですが、これって人生においても非常に重要です。時代が変わって、「そんな技術、もういらないよ」という状況になっても、苦労して身につけた専門性が捨てられない人はたくさんいます。
早めにあきらめて、新しい分野をゼロから学んだほうが、よっぽどよい場合も多いのに、「過去の経験やこれまで身につけたスキルを生かす」という美辞が言い訳になっていて、いつまでも過去に学んだことに引きずられる。損切りの重要性を含め、投資をしない人にも役立つ本だと思って、ラジオでご紹介しました。
藤野:私がこの本で言いたいことは、ちきりんさんが今年上梓された『マーケット感覚を身につけよう』とまさに同じなんです。実はこの前、大学で講義をしたときに、アンケートを採ったんですよ。「投資のイメージってどうですか?」って。すると、90%の人は「投資は悪」と言っているんですね。
ちきりん:いまだにそんな状態なんですか!?
藤野:以前よりひどくなってるんです。「投資は悪」はまだいい。最大の問題は、「労働が悪」。
ちきりん:「労働が悪」? ブラック企業のことですか?
藤野:働くこと自体がブラックなんですよ。
ちきりん:えっ、働くことがブラック? なぜ、そんな話に?
デフレと節約は「宗教」になった
藤野:アベノミクスでインフレらしきことが起きたけど、まだインフレにはなっていません。だからデフレ的な考えがまだ支配しているんです。
ちきりん:私みたいに、(日本経済が)成長していた時代や、現時点で成長している新興国を知っていると、「成長は七難隠す」と言えるくらい価値があると痛感できます。企業も売り上げさえ伸びていれば、組織が少々グチャグチャでもうまく回る。人も成長する。毎年のように給与が上がると未来に不安がなくなる。成長ってホントに大きな意味がある。
でも、成長する社会を見たことがない世代は、そのメリットがわからないんでしょうね。見たこともないものには期待できない。だから「成長しない社会」を前提に生きがいを見いだそうとしているのかも。