日本人は「節約命」の考えをそろそろ捨てよう 藤野英人×ちきりん、デフレの稼ぎ方を語る
藤野:デフレのマインドが「道」になっているんです。茶道や剣道の「道」です。「デフレ道」。もしくは「節約道」。
ちきりん:「豊かな生活を求めないという生活態度のほうが、より多く稼ぐとか、より高く売れる社会より正しい」というロジックを作り上げてしまっているんですね。
藤野:そうなんです。いま日本には2種類の人がいるとみています。「希望最大化戦略」をとっている人と「失望最小化戦略」をとっている人です。とくに90%の人たちが失望最小化戦略をとっていますね。彼らは将来の期待がマイナスなんです。すると、行動して挑戦をすることは、非常に損だということになる。だから支出や投資を減らすことは、論理的に正しいとなるんですね。
さらに「労働は時間とストレスをおカネに替えることだ」っていう考え方が強いから会社が好きになれない。ルールから外れると不安になるし、突出しないことがリスクを減らすことだと思ってる。
ちきりん:そういう人って私のブログを読まないから、あまりそういう人に会わないかも……。
藤野:そうでしょうね。ちきりんさんのブログは希望最大化戦略の人を集めていますよね。
ちきりん:はい。私のブログの読者はみんなすごく前向きだし元気です。ちきりんブログって、デフレマインドの人が読んでも全然面白くないんですよね。「夢物語みたいなことを言って」とか「一般の人はそんなことはできない」とか思えてしまうから。
でも、希望最大化戦略を採っている人は、私のブログにワクワクするし、自分もやってみようと思える。結果としてそういう人ばっかり集まってくる。だから私、最近の若者はやる気があって、ものすごく優秀だといつも思っています。
藤野:たしかに、優秀な若者は増えていますね。一方で、失望最小化戦略の人が10年前に40%だったのが、今は2倍以上に増えました。5年スパンで見るとインフレの方に向かわざるをえないけど、短期的には、デフレの巻き戻しが来ているなと、すごく感じています。
イノベーションが起きると「消える」ビジネスとは
ちきりん:私、藤野さんがおっしゃっている「ちょっとでも安いものを探す生活防衛的な人たち」によるデフレのほかに、もう1つ別の理由によるデフレの波が来ていると思っているんです。それは非合理なものにおカネを払わないっていう、非常に合理的な形のデフレです。
たとえば、お店で2000円の値段が付いているネックレスって、ネットでなら1000円で売れるんです。だって家賃も人件費も圧倒的に小さいから。これって結果として物価は半分になっているわけですが、非常に合理的なデフレでしょ。
格安眼鏡もそうですよね。なぜ5万円だったものが5000円になるかというと、中間業者を排除したり、大量買い付けでコストを下げたりしているからです。デザインとか使い勝手など、消費者が価値を感じるところには集中的にコストをかけ、それ以外はばっさり切り捨てて安くする。そういった「価値ある部分への集中」という非常に合理的な動きによっても、デフレは促進されています。