“ランチ自転車”で仕掛ける社内ムーヴメント Retty CEO武田和也×リクナビNEXT編集長細野真悟
なんともうらやましいその制度は「らしさ」がポイント
細野(リクナビNEXT編集長、以下細野) あらためて、「ランチ自転車」という制度を取り入れた経緯、背景をお聞かせください。
武田(Retty CEO、以下武田) もともとRettyはオフィスをよく移転します。そんなカルチャーがあるんですが、今から2年前は築地エリアにオフィスがあり、どうせランチに行くなら、銀座や新橋あたりまで足を伸ばしたいという声が。そうなると、自転車だったら早いよね、と。社員間で自然発生的に言い始めたことがきっかけです。
Rettyの機能として、気になる飲食店をブックマークできる「行きたいボタン」というのがあるのですが、それを利用しながら、実際に行きたい店にランチしに行くという取り組みです。
細野 「ランチ自転車」の目的はなんですか?
武田 できるだけ多く自社のサービスを利用するのが目的です。やはり、自分たちが作っているサービスを実際に使うというユーザー目線が、これからのサービス運営のあり方だと思っています。そのために、頻繁にオフィスの引っ越しをしています。
細野 まさかこの取り組みのためにオフィスを転々と?
武田 はい!そのためです(笑)。そのおかげで、この4年間、訪れたお店は相当数に上ります。
細野 社としての福利厚生はありますか?
武田 月1回利用できる「グルメ手当」というのがあって、好きなお店で食事できる制度です。しかも、上限金額はなしで、社員や友人同士で行ってもOKです。ただし、支給する食事代は本人の分に限りますが。
一同 ですよね~(笑)。社外の人もOKかと思いました。
細野 「ランチ自転車」という取り組みで、部署を超えたコミュニケーションなど、思わぬ効果のようなものはありましたか?もしくは、問題点とか。
武田 部署を超えて自然発生的にグループができて行きたい店に行く流れが多いです。業務的に遠い部署間でも「行きたい店」という共通の目的で繋がれるのはとてもいいことだと思っています。当初、そこまで想定していなかったのですが、新しいアイデアが生まれるほか、仕事がスムーズになることもあり、副次的なメリットになっていますね。
他方、お店のリサーチ機能を充実させる必要性を感じています。社員がサービスを使っているうちに、店の利用シーンや駅などからの距離、コスパがわかりにくいなど、いろんな課題が見えてきました。
細野 なるほど。スタートアップ業界では自分たちが作ったサービスを自分たちが使うことで、よりサービスをブラッシュアップしていくことを「ドッグフード」と言いますが、Rettyさんの取り組みはまさにそれに当たりますよね。
武田 ええ、サービスのローンチ(立ちあげ)当初から、僕らはユーザーと近い目線なんです。時々ユーザーさんと飲みに行ったりすることもあるほどで、それぞれお店の利用頻度や店選びで配慮する点が違うので、勉強になりますね。
細野 以前、食に興味がなかった社員さんも入社後、食へのこだわりができたという話を聞いたことがあります。これには御社の文化を感じさせられました。
武田 僕自身、それが一番嬉しいところです。入社前はグルメというわけではなかった社員が、入社後「どうせならおいしいものを食べたい」という志向に変わっていく。誰でも歳を重ねると、そういう志向に変化しますよね。そういう当たり前のことに、若いうちに気づいてくれる。
本当においしい飲食店に行くことに価値を見出し、グルメにはまっていくというのは、ある意味、人間の本質的な欲求だと思うんですが、それが早い段階で形成されるのがRettyの社風だと思います。
細野 サービスを使いこなし、社風に染まる社員が出てくる、そして会社を好きになる。
武田 そうですね。おいしいものを食べるときって、人が幸せになる瞬間ですよね。その至福の瞬間を提供するのがRettyのサービスの目的そのもので、自社のサービスを社員が利用することで1,000万人のユーザーの気持ちをイメージし、体現できます。当然、やりがいも違ってくると思います。