大塚HD、大型薬特許切れでどうなる? 後継薬や次世代を担う新薬への取り組み

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「多様なエンジンによって成長する」と語る樋口社長

だが、特許切れは以前からわかっていたこと。予期された最大の危機を乗り越えるべく、大塚HDは次世代を担う新薬の研究開発に注力してきた。2014年度から2018年度までの5カ年の中期経営計画(中計)では、2016年12月期を業績の底に、さまざまな新薬で再成長を狙うとしている。

取り組みの成果は現れつつある。一つは樋口達夫社長が「中計の最重要品目」と位置づける、持続性注射剤「エビリファイメンテナ」。飲み薬のエビリファイを月1回投与の注射剤にしたもので、薬の飲み忘れを防げる。2013年の米国発売を皮切りに、欧州、日本などでも発売した。販売は好調で、今期は410億円の売り上げを見込む。

後継薬を8月投入、多様な収益源を構築へ

今年7月には、エビリファイの後継薬に当たる抗精神病薬「レキサルティ」が米国で製造販売承認を取得し、8月3日、まるでエビリファイの生まれ変わりのようなタイミングで世に出た。適応症は、統合失調症と大うつ病補助療法。レキサルティは、エビリファイが使われてきた統合失調症、うつ病のような「精神障害・気分障害」に加えて、アルツハイマー型認知症におけるアジテーション(暴力・徘徊)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった「行動障害・不安障害」のカテゴリーにも適応が見込まれる。日本と欧州での発売や米国での効能追加に向け、目下開発を継続している。

今年1月に約4200億円で買収した米国のバイオベンチャー、アバニア・ファーマシューティカルズにも期待の薬剤がある。もともとアバニアが持っていた世界唯一の情動調節障害の治療薬「ニューデクスタ」や、アルツハイマー型認知症の行動障害を対象にした開発品だ。がん領域では、昨年国内で発売した大腸がん薬「ロンサーフ」を欧米にも投入し、成長ドライバーに育てようとしている。

樋口社長は、「従来はエビリファイという大型製品があったが、だんだんと多様なエンジンによって成長するという収益構造に変わりつつある」と胸を張った。大塚HDがエビリファイ依存の企業から変貌する準備は整いつつある。
 

長谷川 愛 東洋経済 記者
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