大塚HD、4200億円買収に"高すぎる"の声 開発中のアルツハイマー型認知症薬に期待

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4200億円を投じた今回の買収に、「妥当な金額」と強調した樋口達夫・大塚ホールディングス社長(撮影:尾形文繁)

大型の抗精神病薬「エビリファイ」の2015年4月特許切れを眼前に控え、大塚ホールディングス(HD)は、35億3900万ドル(約4200億円)を投じる巨額買収に動いた。キーワードは世界に3000万人の患者がいる「アルツハイマー型認知症」。樋口達夫社長は「アルツハイマー型認知症への取り組みが中長期の成長に重要だ」と会見で強調した。

大塚HDは12月2日、米国のバイオベンチャー、アバニア・ファーマシューティカルズを買収すると発表。アバニアは米国ナスダックに上場しており、近日中に株式の公開買い付けで大塚HDが完全子会社化する。

大塚HDとアバニアは、いずれも中枢領域が強みだが、得意分野が異なる。大塚HDが統合失調症、うつ病、双極性障害などの「精神疾患領域」を得意としてきたのに対し、アバニアはアルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの「神経疾患領域」に注力。大塚HDは買収でこれまで手薄だった「神経疾患領域」に本格参入することで、補完効果が見込める。

アルツハイマー型認知症薬を成長ドライバーに

アバニアは、2011年に世界初で唯一の情動調節障害の治療薬「ニューデクスタ」を米国で発売。情動調節障害とは、感情が制御できずに突然泣いたり笑い出したりしてしまう病気で、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの患者の一部に見られる。この症状はこれまで病気と認識されていなかったが、アバニアが「ニューデクスタ」で新しい市場を作ったことになる。

その実績もさることながら、大塚HDが今回の買収で最も強く欲したとみられるのは、アバニアが開発中のアルツハイマー型認知症の行動障害の治療薬だ。アルツハイマー型認知症患者の約50%が発症する暴力や罵声などの行動障害にはまだ治療薬がなく、開発品が発売にこぎ着ければ大型化が期待できる。

大塚HDはもともとアルツハイマー型認知症関連の開発品を複数持っている。抗精神病薬「ブレクスピプラゾール」はアルツハイマー型認知症の行動障害の治療薬として臨床試験を進めており、物忘れ症状の治療薬も開発している。開発品のラインナップを拡充することで、アルツハイマー型認知症の薬を今後の成長ドライバーに育てる考えだ。

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