大塚HD、4200億円買収に"高すぎる"の声 開発中のアルツハイマー型認知症薬に期待

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樋口達夫・大塚HD社長は、「アバニア社の業績貢献は19年度以降」と見る。(撮影:尾形文繁)

とはいえ、4200億円という買収金額は「高すぎる」との声が多い。アバニアは2013年9月期に売上高7536万ドル(約90億円)を計上した一方、営業赤字が7142万ドル(約85億円)の赤字会社だ。

あるアナリストは「新薬候補が大型化する期待値は理解できるが、収益貢献には時間がかかり、不確実性が高い」と指摘する。また、9月には臨床試験の良好な結果が出たことでアバニアの株価が大きく上昇しており、「その前に買収していればもう少し割安に買収できた可能性もある」(アナリスト)のは悔やまれる点だ。樋口社長は会見で「妥当な金額と判断した」と言い切ったが、買収発表翌日3日の大塚HDの株価は5%下落した。

2015年4月には、前2014年3月期に世界で5757億円を売り上げた抗精神病薬「エビリファイ」の特許が米国で失効、大幅な減収は必至だ。ただ、樋口社長は「アバニアが本格的に収益に貢献してくるのは2019年度以降」と見る。

前14年3月期並みの業績に戻るのは2018年度以降

今年8月に発表した中期経営計画では、最終2018年12月期に、過去最高だった2014年3月期の売上高1兆4527億円、営業益1987億円並みの水準まで回復させる計画を掲げている。しかし、それを担うのは抗精神病薬「ブレクスピプラゾール」など新薬の成長であり、アバニアの寄与は織り込まれていない。

今回の買収は、中計のさらにその先を見据えての行動となる。特許切れという宿命を抱えた製薬会社が持続的に成長していくためには、長期的な視点に立った有望な新薬候補、いわゆるパイプラインのコントロールが不可欠だ。

短期的な成果を求めがちな株式市場には厳しい評価をされた今回の買収。だが、大塚HDがアルツハイマー型認知症をはじめとする中枢領域で世界をリードする企業になることができれば、4200億円が“高い買い物”だったとは言われなくなるだろう。

長谷川 愛 東洋経済 記者
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