著名な中学受験塾の講師の方から聞いた話である。教え子の中に算数、国語が抜群にでき、成績がいつもトップクラスの少年がいたという。彼は理科も物理、化学領域は極めてよくでき、その塾のエースだった。ところがどうしたことか、植物分野を除く生物領域がからっきしダメ。彼は昆虫、魚、人体の図を見るとアレルギー反応を示していたのである。
ある日、塾の廊下で、少年の目の前を一匹のゴキブリが素早く横切った。少年の反応は正直だった。少年は腰を抜かし、廊下に尻もちをついてしまったというのである。
少年の昆虫嫌いは模試の時も変わらず際立っていた。昆虫の顔の図が出ているだけで額に油汗が浮かぶ。具合が悪くなるので問題用紙を伏せ目を背けてしまうこともあった。塾のスタッフは皆この行動に困り果ててしまった。彼の両親は医師で、彼も将来医学部を目指していたからである。
けっこういる!「生物嫌い」の医学部志望
医学部を志望していながら何故?と不思議に思われるだろうが、医学部志望者の中には、意外にこの手の生徒が多い。私も幾人か思い当たる生徒がいる。生物の問題で生き物や人体の一部が出てくると、途端にアレルギー反応を示すケースである。
この少年のように男子学生では稀だが、女子学生の場合、「生き物嫌い」の生徒も多い。中でも「虫嫌い」である。堤中納言物語に登場する「虫めづる姫君」など本当に存在したのかと、勘ぐってしまう。少年が卒倒してしまったゴキブリは特に人気がない。それは何故なのか。人は何故ゴキブリを怖がるのか。実は、学問的に考えてみると面白い。
諸説あるが、われわれヒトのDNAにゴキブリの恐ろしさが刷り込まれており、継承されているという説はもっともらしい。
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