災害対応「日本は省庁・組織間の調整が足りない」 元FEMA危機管理官に日本の震災対策の課題を聞く

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2024年1月6日、石川県輪島市の被災地を歩く警察官(写真・2024 Bloomberg Finance LP)
元日に能登半島を襲ったマグニチュード7.6の大地震から1カ月が過ぎた。野党や一部の地方自治体の首長は「自衛隊の派遣が逐次投入だ」「政府の対応が後手に回った」と批判している。災害発生後72時間を経過すると被災者の生存率が大幅に下がると言われる中、政府の初動に問題はなかったのか。
アメリカの連邦緊急事態管理局(FEMA)で長年危機管理を担当し、日本の危機管理にも詳しいレオ・ボスナー氏(77)に日本の防災体制の現状や課題を聞いた。ボスナー氏は「災害対応における日本の最大の問題は、ハードウェアの不足ではなく、計画、組織化、省庁間調整のそれぞれの欠如にある」と指摘する。

 

――能登半島地震の被災地の現状をどう見ていますか。

多くの悲劇的な死傷者をもたらし、広範囲にわたる損害や財産の破壊につながった恐ろしい出来事だ。日本の自然災害への脆弱さを改めて思い知らされる。

幸いなことに今回の震災は、2011年3月に起きた東日本大震災のトリプル災害(地震、津波、原発事故)ほど深刻ではない。ただ、これは日本の当局が現状に満足する理由にはならない。

実際、日本の当局にとって、能登半島地震の対応を批判的に検討し、その遅れや問題がないかを調べる良い機会となる。また、もし仮に今回の震災が東日本大震災のような規模の出来事だったとしたら、自分たちの危機対応システムはどれほど機能していたのか、どこを改善する必要があったのかを改めて問う機会にもなる。

行政機関は記録を残すべきだ

――自衛隊の活動を含めた被災地での日本政府の対応についてどう思いますか。

現時点では何とも言えない。第1に、災害対応活動に関する具体的な問題を指摘する英語ニュースをあまり見ていないからだ。第2に、活動はまだ続いているからだ。

私が東日本大震災について実際に現地調査を行ったのは発生からほぼ1年後の2012年1月だった。その時までには、人々は何が起こったのかを正確に振り返って考えることができるようになっていた。

今すぐに各行政機関が腰を据えて、災害時における自らの行動、何がうまくいき、どこに問題があったのか、将来的に問題を解決するために何が必要かについて話し合い、記録に残すことをお勧めしたい。

警察は警察の中で、消防は消防の中で、自衛隊は自衛隊の中で、それぞれやるべきだ。各機関が独自の記録を作成する必要がある。

そして、おそらく今から半年後、誰かが(おそらく日本政府だろうが)これらの記録をすべてまとめて災害対応に関する包括的な報告書を作成し、日本の災害対応システムを改善する方法があるかどうかを真剣に検討すべきだ。

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