「自分らしい逝き方」選んだ81歳祖母が見せた最期 死から目をそらさず、人生に句読点を打つ強さ

✎ 1〜 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 19
拡大
縮小
人生に句読点を打つように自分の最後を選び取っていった女性。彼女の最後の日々とはーー(写真:塩内さん提供)
人はいつか老いて病んで死ぬ。その当たり前のことを私たちは家庭の日常から切り離し、親の老いによる病気や死を、病院に長い間任せきりにしてきた。結果、死はいつの間にか「冷たくて怖いもの」になり、親が死ぬと、どう受け止めればいいのかがわからず、喪失感に長く苦しむ人もいる。
一方で悲しいけれど老いた親に触れ、抱きしめ、思い出を共有して、「温かい死」を迎える家族もいる。それを支えるのが「看取り士」だ。
この記事の画像を見る(6枚)

21歳甥っ子が祖母を看取っておぼえた安心感

塩内美春の長男、太一郎(21)が祖母の最期を振り返った。

「おばあちゃんが亡くなっちゃうと思うと、すごい怖いっていうのもあったんですが……、でも、何だろう? 少し安心感もありました。家族全員で見守りながら、僕の膝のうえで最期を迎えてくれたので、たぶん、おばあちゃんも安心していたんじゃないですかね」

浅黒く日焼けした太一郎は、ふっくらとした顔をやさしくゆるめて、悲しい場面について語った。祖母の千恵は81歳で、2023年1月4日の深夜のことだ。

肺と肝臓に末期ガンを患っていた千恵が、余命1カ月と診断されたのが2022年11月。千恵は一人暮らしの自宅にこのままいたい、と2人の娘に伝えて在宅介護が始まった。姉妹はそれぞれ近くに住んでいた。

腎臓透析を受けていた太一郎の祖父は一昨年、病院で亡くなった。コロナ禍の病院で面会謝絶の末に、たった一人での旅立ちだった。

「それが自分的にも悔しくて、おばあちゃんにはもっといい最期を迎えてほしくて。看取り士さんから(看取りの)作法を学んで、家族で看取れてよかったです」

彼の声音には表情通りのやさしい安堵感があった。

次ページ昔のように孫が生まれて祖母を看取る家
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT