なぜ地方創生はみんなで決めるとダメなのか 何かを変えねばならない時、合意形成は必要?

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例えば、ある地域で活性化のために空き家を改装し、ゲストハウスにしようというプロジェクトが持ち上がったとします。

「筋違いの反対」にひるむな

この際、地元の宿泊施設の関係者が、「そんなものができたら客をとられる」と考えて、陰に陽に反対をするかもしれません。しかし、これは既存の宿泊施設が、ゲストハウスよりも素晴らしいサービスを行って、新たな競争に勝てるよう努力すれば済む話です。

このケースで、既存の宿泊施設関係者が、地元の宿泊事業を牛耳る正当性は、何一つとしてありません。また、1件や2件のゲストハウスができたことが原因で、既存の宿泊施設がすべて廃業になることなど、現実としてはありません。

なぜならゲストハウスにはせいぜい数名程度しか宿泊はできないわけです。しかも大抵は、ゲストハウスのオーナーはまずは「自分の知り合い」などに宿泊してくれるよう営業をするため、顧客は既存の宿泊者とは別の営業ルートから来ることになります。つまり、その地域とっては素晴らしい新規顧客になります。

このように、地域での「合意形成」は成立しにくく、「反対」そのものが筋違いということが少なからずあるのです。しかし、こうした筋違いの反対に対しては、えてして「彼らの意見も聞いて内容を変更すべきだ」「ちゃんと合意形成してから進めるべき」などと話になり、そもそも新たな取組をする人が悪者、のようになってしまいます。そんなことになるので、改革が進まず、結果としてその地域は衰退してしまうわけです。

私も各地で仲間と事業会社をつくってスタートする際に、地元の人の一部から「聞いていない」とか「お前のプロジェクトを潰してやる」などと言われることがあります。しかし、それでやめいたら、地域は何も変わりません。反対されず、合意形成をして決まる物事が、必ずしも地域にとってプラスであるとは限りません。

人間が互いに主観を排除し、癖を自認しながら、フェアに物事を議論するということは、極めて難しいことです。

例えば、集団で話し合いをする時、参加者の多くは「自分の意見を表明するスキル」と「素直にきいて理解するスキル」のどちらか、または双方が不足しています。自分の言いたいことが的確に言え、人の言っていることを即座に的確に理解できるなんてことはまずありえません。

自分勝手な行動をとったり、横道にそれる話や、話の腰を折るような邪魔を入れたりする参加者がいたかと思えば、変に仕切りたがって誤ったリーダー行動をとる人も現れます。悪態をつき感情的な行動をとる参加者も少なくありません。

さらに、何より、自分の責任が明確になったカタチで、意思決定することを避けたいと考えている人が多く、曖昧な結論でしか合意できなかったりするのです。

次ページ皆で決めると起こりがちな「3つのワナ」とは?
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