「ある地域を活性化する」という時、全国の自治体関係者などが注目するのは、その時々の「成功事例」です。厳しい環境下でも、地元の少数のチームが新たな方法を地道に積み上げ、成果を生み出す地域は必ずあります。その「サクセスストーリー」と実績は、他の地域の人々の「希望の星」になります。
しかしながら、成功事例は時に”政策の道具”として扱われ、数年のうちに使い捨てられてしまうという悲しい現実があります。「成功事例を皆に伝えるため」という大義名分で行われる、さまざまな行政の施策が実はその地域の負担となり、長期的にはその活動を衰退させていくことになりかねないのです。
成功事例の”調査”事業は、現場を疲弊させるだけ
成功事例に群がる人々が害悪になる可能性があることは「地方を滅ぼす『名ばかりコンサルタント』でも触れたとおりです。今回は、地方創生に携わるすべての方々への警鐘の意味も込めて、「『成功事例の使い捨て構造』がいかに地域をつぶしているか」をとりあげたいと思います。
成功している地域の事業主体の方々は、「他人」から「自分たちの手柄」にするような方法に乗せられないようにしなければなりません。重要なのは、一時的な注目を集めることではなく、自分たちの地域の取り組みが持続することなのです。一方で「その他の地域の人々」は、成功している主体に配慮しながら、取り組みをする必要があるのです。
では、成功している事業主体は、どういうプロセスで疲弊していくのでしょうか。まず、地域で、地道な努力を重ねながら活動が徐々に拡大し、成果が目に見えてくると、地元紙から全国紙へとその取組が掲載され、多くの人が知ることになります。
その時期になると、「成功事例集に掲載させていただきたいので調査にご協力ください」といった連絡がきます。「事例集を作成するうえで、必要な資料がほしい」などと言われ、資料を手渡します。後日、作成された事例解説の内容を確認し、修正を行って返送。そして、成功事例集が世に出ていきます。
すると、次から次へと、さまざまな役所の成功事例集に載せたいという話が相次ぎます。同じ国の機関でも、シンクタンクでも共有はされず、毎回毎回同じようなヒアリング対応に追われます。
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