幸之助は、「厳しく批判する人」を大事にした 「批判してくれる人は大事にせんとあかん」

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大徳寺の立花大亀老師は、常々、松下を厳しく批判した。その老師と松下はどのように向き合ったか(写真は大徳寺の勅使門、soulman / Imasia)
昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部) 

 

立花大亀(だいき)という有名な老師がいた。臨済宗大徳寺派顧問で政財界人と幅広い交友があった。2005年8月25日、105歳で亡くなった。戦後、荒廃した大徳寺を再興した老師として有名である。

当然、管長になる人であったが、ご承知のように、禅寺、とくに本山の管長は結婚してはいけない。ところが、この大亀老師は「わしゃ、管長なんかなるより、女のほうが好きだ」といって結婚してしまった。

管長を捨てた強者(つわもの)。だから、発する言葉も周囲や相手を気にするという様子もなく、いわば、「言いたい放題」。そこが、かえって多くの政治家、経営者にとって魅力的であったのか、政財界トップが交流していた。松下幸之助も、そのひとりであった。

「商売人のくせに」と松下を批判

政財界の人たちが長い付き合いをしていたから、この老師に、なにがしかのシンパシーを感じていたのだと思う。とはいえ、松下幸之助の批判が激しくなった時期があった。「商売人のくせに」などというようなことを、何かにつけて言い始めた。私は、禅僧の老師とはいえ、そういう発言はないだろう、と内心、不快、憤りを感じていた。

そのようなある日、松下が、私に、「今度、大亀さんと食事しようと思うんやけど、連絡して、予定をとってくれ」と言う。

さすがに、松下さんも、腹に据えかねて、大亀老師に「一言、なかるべし」なのかと思った。「ああ、きみも一緒に食べよう」。そこで3人で食事をすることになった。

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