ホンダ新社長、研究畑のトップが就任へ 「世界6極体制」に向けて経営一新

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 2月23日、ホンダは八郷隆弘常務執行役員が社長に昇格する人事を発表した。写真は都内の記者会見会場で同日撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 23日 ロイター] - ホンダ<7267.T>は23日、伊東孝紳現社長(61)が取締役相談役に退き、八郷隆弘常務執行役員(55)が社長に昇格する人事を発表した。6月の定時株主総会後に正式決定する。

世界を北米、欧州、日本など6地域に分け、各地域で現地生産・開発などを推進する伊東氏の「6極体制」戦略を進化させ、主力車のリコール(回収・無償修理)などで傷ついた同社の収益力改善をめざす。

八郷氏は4月1日付で専務執行役員となる。ホンダの研究開発部門である本田技術研究所の社長、本社での取締役を経ずにホンダ社長に就くのは初めて。

伊東社長は同日、八郷氏とともに会見し、この時期に社長交代を決めた理由について、自らが推進する「世界6極体制」の下、「地域が各々自立するとともに世界で効率を上げていく、ちょうどそのタイミングに差し掛かった」と説明。「2015年、飛躍する準備は整った。ここで新しく若いリーダーのもと一丸となってチャレンジすべきと考えた」と述べた。

次期社長となる八郷氏は、魅力的で品質が高く価格競争力のある車づくりを「今後も着実に展開し、全力でチャレンジする」と抱負を語った。また、「グローバルなオペレーションを世界6極でさらに進化させることが私に課せられたテーマ」と指摘し、「将来につながる盤石な事業運営体制を構築する」と述べた。

八郷氏は入社後、車体設計を中心に四輪車の研究・開発に従事。現在は中国の生産統括責任者を務めている。研究所時代には米国へ駐在したほか、購買や生産部門の知見があり、欧州や中国での実績を持つ。伊東社長は、こうした八郷氏の経験が「これからのホンダの事業運営に必ず役立つ」と述べた。

伊東社長はリーマン・ショック後の2009年に就任。当時販売が落ち込んだ米国など先進国への依存を減らすため、長期的な成長が見込める新興国市場の開拓へ大きく舵を切り、「世界6極体制」によるグローバル・オペレーション改革を推進してきた。

しかし、昨年は主力車「フィット」などが度重なるリコールを引き起こし、ホンダ車の品質が大きく問われる事態となった。同社長は、リコール続発の間接的な原因が販売拡大への急傾斜にあったとして、2017年3月期に世界で600万台の四輪車を販売するという自ら掲げた目標も取り下げた。

会見の中で、伊東社長は、リコールへの対応について、「研究開発分野で課題が多く、昨年、突貫工事で立て直した」と語るとともに、品質改革担当役員に据えた福尾幸一専務執行役員を今回の人事で研究所社長に就任させ、「安定的な(品質管理)体制が出来上がるという道筋を開いた」と述べた。

新社長となる八郷氏については、「彼を悪くいう人を聞いたことがない」といった声や「温和で調整型と言われている」との評価が社内外に少なくない。ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリストの中西孝樹氏は、ホンダとしては足場を固めるべき時期にあるため、八郷氏を次期社長に選んだのではないか、とみる。

伊東社長にはリコール続発や業績伸び悩みなどを背景に、進退論がくすぶっていた。しかし、関係者によると、1カ月ほど前の段階では、逆に伊東氏の続投説が高まっていたという。

ホンダのある現役幹部は「年始から1月にかけては伊東氏続投の感じで動いており、本人もその気持ちが強かった。タカタの欠陥エアバッグ問題もあるので、もう一期やるというのが社内での強い見方だった」と話す。だが、会見で八郷氏は「(社長交代の)話があったのは年明けに中国にいるとき、伊東社長から電話があった」ことを明かしている。

同幹部は「今にして思えば、それ(続投の示唆)はカムフラージュだったのかもしれない」と振り返る。また、伊東社長退任の一番大きな理由は、国内販売の下振れにつながった「フィットのリコール」と指摘、伊東社長が「自ら退任を決めた」とみている。

*内容を追加しました。

 

(白木真紀 取材協力:金昌蘭、白水徳彦 編集:北松克朗)

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