「性教育」を毛嫌いする日本が抱えている大問題 女性の権利に対する意識低下につながっている
アメリカで中絶をめぐる激しい議論が巻き起こっている。きっかけとなったのは、人工中絶の権利を認めるアメリカ最高裁の判決「ロー対ウェイド裁判」が覆る可能性があるという情報が漏えいしたことだ。近く最高裁の最終意見が出るとみられる中、アメリカでは著名人も巻き込んだ「プロチョイス(人工中絶擁護派)」と「プロライフ(中絶反対派)」の戦いが激しくなっている。
一方、日本では人工中絶には配偶者の同意が必要とする母体保護法に対する批判が強まっている。アメリカを含む多くの国では、女性が妊娠、出産、中絶など性や子どもを産むことを選択・決定できる「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)」が認められているが、日本ではまだこの意識は低いと言わざるをえない。
アメリカでの論争はけっして日本人に関係がないことではない。本稿では日本でリプロダクティブ・ヘルス/ライツに対する理解や議論が深まらない理由が、性教育を毛嫌いする教育現場にある可能性について、作家の阿古真理氏が論じる。
中絶に配偶者の同意なぜ必要?
人工妊娠中絶ができる飲み薬2種類について、厚生労働省が「投薬や服薬には配偶者の同意が必要」という見解を5月17日の参議院厚生労働委員会で明らかにしたことに対し、批判が広がっている。
これらの薬は、昨年12月にイギリスの製薬会社から日本での使用を認めるよう申請されている。日本では現状、中絶の方法は手術しかないが、すでに70以上の国と地域で経口中絶薬は承認されている。
厚生労働省子ども家庭局母子保健課に発言の意図を問い合わせたところ、母体保護法に基づいたとのこと。法律を確認すると、第14条で、母体の健康を著しく害するおそれがある、あるいは暴行などで妊娠した場合は、「本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる」とある。
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