方向性の相違から、ドル円は来年125円視野 BBHのマーク・チャンドラー氏に聞く

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生産性の測定は難しい。既存の測定方法は製造業を前提にしているが、産業構造は製造業中心から、サービス産業中心に移っている。例えば雑誌編集者の場合、記事を同じ期間に5本ではなく20本書けば生産性が上がったと言えるのか、という問題だ。一般論で言えば、生産性を上げる方法は、インフラを整備することと省力化を進めること。省力化の一つはエネルギー効率の改善で、もう一つは、コンピュータ革命だ。

コンピュータ革命は未だ終わっていない。3Dプリンタの次は、4Dプリンタという話が出ている。モノの形が時間の経過とともに自己変形していくものだ。スマートファブリックのような繊維革命もある。そうした革命で製造業が東アジアから米国に戻ってきているという変化もあるので、将来は、生産性が上がる可能性がある。

先進国の問題は資本余剰

――先進国の長期停滞ということが言われる一方で、これまで高成長を続けてきた中国も課題を抱えて内向きになっています。

確かに、外交面では南シナ海でベトナムやフィリピンなどとも衝突があり、国内の構造改革でも課題を抱えているので、市場も中国を注視している。成長率は10%から足元7%に低下しているが、さらに5%に下がっていくと思う。

ただ、中国は外貨準備高が4兆ドルある。4兆ドルあれば、多くの問題は解決できる。1989年から中国のGDP(国内総生産)は24倍になった。汚職や環境汚染の問題を解決できれば、過去のような高成長ではなくても、中長期的に強い経済を手に入れることができるだろう。

――世界的に成長のフロンティアが消滅してきている。

問題はおカネがありすぎる(too much money)ということだ。過去の経済では「欠乏」が問題だったが、いまは「過剰」が問題になっている。米国など先進国では、いま貧しいとされる人たちも2~3世代前の金持ちより豊かな生活を送っている。モノも食べ物も資本も不足していた時代から、有り余る時代になってきている。資本余剰が低金利の原因だ。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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