「ダイエー」という屋号を失う会社の運命 赤字続きの子会社にイオンがテコ入れ

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「ダイエーの屋号は店舗から完全になくなる」。イオンの岡田社長が断言した(撮影:大塚一仁)

店舗の改装投資や本部人員の削減が不十分だったため、ダイエーを取り巻く環境は10年以上にわたり厳しいままだった。そこで今回、親会社のイオンが決断を下した。9月24日、ダイエーは株式交換でイオンの完全子会社となり、12月26日付けで上場廃止となることが発表された。意思決定のスピードアップや機動的に資金を投下することが狙いだが、同日の会見でイオンの岡田元也社長は、「会社は残るが、2018年頃には『ダイエー』の屋号は店舗から完全になくなる」とも述べた。

同日に発表されたダイエーの業績修正からも、その苦境ぶりが改めて鮮明になっている。15年2月期の売上高は8300億円から7870億円、営業損益は20億円の黒字から65億円の赤字に下方修正した。要因は既存店の不振で、単体ベースで当初は上期に前期比2%増を計画していたが、3%減になる見通し。通期計画も3%増から1%減に引き下げた。

 なぜ赤字になるのか

今年5月、イオンはマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東の3社による「スーパーマーケット連合」の創設で会見したばかり。今回、完全子会社化するダイエーとの関係も注目される(撮影:梅谷秀司)

売り上げ不振の要因は、販促の切り替えに対する認知度が上がらず、現場が混乱したことが挙げられる。従来、毎週、割り引きを行う「OMCカードご優待デー」を実施してきたが、4月からこれを隔週にし、替わりにイオン同様、毎月20日、30日に「お客様感謝デー」を実施。WAONやイオンカードによる支払いに対して割り引きを行うこととした。

だが、この施策が定着せず、客離れを招いた。さらに天候不順による衣料品の苦戦と値下げロスも響いた。誤算が重なり、粗利率は計画に届かず、上期に103億円の営業赤字となる公算だ(前上期は41億円の赤字)。

下期は売り上げ見通しこそ引き下げたものの、利益計画はほとんど変更していない。ダイエー側は「9月に入りトレンドは回復基調にある。下期は販促を見直し、本部経費もスリム化する」としている。「OMCカードご優待デー」は隔週から毎週の実施に戻し、衣料品も商品投入サイクルを年4回から8回に増やし、機動的なトレンド対応や在庫リスクの軽減を図る。ただそれで上期103億円の営業赤字から、下期に38億円もの営業黒字を出せるのか。ハードルはかなり高そうだ。

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