「ダイエー」という屋号を失う会社の運命 赤字続きの子会社にイオンがテコ入れ

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今後は首都圏と近畿圏に特化し、業態も絞り込んで来春に都内で1号店を開業する、食を中心にした新業態「イオンフードスタイルストア」と食品スーパーの2業態で事業を展開していく。北海道、九州の店舗はイオンのGMS(総合スーパー)子会社に移管され、早期にダイエーの屋号が消滅する。一方で食品スーパーは、イオンの食品スーパー子会社からダイエーへの移管もなされる見通しだ。

24日の会見で、岡田社長は「今後のeコマースの成長を前提にすると、大事なのはブランディング。これ(屋号)が分かれていることは、大きく不利になる。イオンとして屋号を整理する段階に来ている」と話していた。今後、イオンの業態、会社および屋号の整理がどう進むか、またマルエツやカスミが参加する首都圏スーパー連合との整合性など、着目すべき点は多い。

会社は残るのか?

完全子会社化されるダイエーで注目すべきは、中期的に会社が残るかどうかだ。今回の発表の中で、イオンは3年から5年後をめどに、”新生ダイエー”が「売上高5000億円、営業利益率3%を実現できる企業となることを、中長期的な目標としている」との方針を示した。だが、かつて経営破綻後にイオンが支援したマイカルは、「ビブレ」「サティ」の屋号だけでなく、会社もイオンリテールに吸収合併され消滅した。

14年2月期末にダイエーは、税効果会計上で約500億円の繰越欠損金があるが、期間損益が改善する見通しが立たないため、税負担を控除する恩恵(最大9年間)を受けられない状況にある。いわば”宝”の持ち腐れの状況だが、完全子会社化した後にグループ内の黒字会社と合併すれば、その恩恵を受けられる。

ダイエーの期間赤字や繰越欠損金の規模を考えると、吸収合併の相手先は全国の「イオン」を運営するグループの中核会社、イオンリテール1社に限られるだろう。もちろん、イオンリテールがダイエーを子会社化し、連結納税制度を利用する手もあるが、市場関係者からは「完全子会社化は吸収合併の布石では」との声も浮上し始めている。「ダイエー」という屋号が消滅することが決まっている中、果たして、”新生ダイエー”はどんな運命をたどるのか。

石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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