「処刑」だけではない、戦場記者の受難 ソーシャルメディアで戦場報道は変わった

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8月20日、米国人ジャーナリストが「イスラム国」のメンバーにより殺害されるシーンが世界中を駆け巡った(写真:Newscom/アフロ)

欧米メディアは、イラク、シリア、イスラエル、パレスチナ暫定自治区ガザ地区など、「戦地」を追い掛けた報道で埋め尽くされている。多くの戦場記者やカメラマンが、各地で展開しているが、米国が限定的な空爆を始めたのをきっかけにイラクの「イスラム国(ISIS)」は、米国人ジャーナリストを処刑した。逆に、シリアの武装組織に拘束されていたほかの米国人ジャーナリストが約2年ぶりに解放されている。

常に危険、そして時には死と隣り合わせという状況で報道を続ける戦場記者だが、その在り方が大きく変化し、彼らの中でこれまでにない「葛藤」を生んでいる。

それは現在進行中の紛争で戦場記者が、現場からの目撃証言や、生の写真、ビデオを、リアルタイムでソーシャルメディアに流すケースが急増したからだ。テレビ放送や記事といった通常の「報道」に先行し、生の情報が現場から発信されることで、時に報道機関内で混乱をも引き起こしている。今後、戦場からの報道そのものが変わる可能性も秘めている。

一緒に遊んでいた少年が目の前で即死

米ネットワークテレビ局NBCの戦場記者エイマン・モヒェディン氏(35)は、その混乱に巻き込まれたベテランの一人だ。エジプト生まれの同氏は、中東最大のニュース専門局アルジャジーラで、2012年のエジプトの民主化革命を取材し、その後NBCに抜擢された。

NBCは、米4大ネットワークテレビで最も古く、今春、プライムタイム(日本のゴールデンタイム)で18—49歳層の視聴率で10年ぶりに首位を奪回し、波に乗っている局だ。

2014年7月16日、ガザ地区のホテルに滞在し、パレスチナ側の報道を続けていたモヒェディン氏は、近くの海岸で4人の少年とサッカーボールを蹴っていた最中、イスラエル側からの砲撃で少年らは即死した。

この惨事は、モヒェディン氏だけでなく、米紙ニューヨーク・タイムズのベテランカメラマンも目撃した。ホテルで写真を送信していた同紙のタイラー・ヒックス氏は、1発目の爆発音を聞き、窓から海岸を見やると、少年が一人、砂埃の中で逃げ惑っていた。2発目が炸裂した瞬間、少年は死亡していた。

次ページ少年の遺体の写真を掲載
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