デニーズ「パンケーキ」、異常人気の舞台裏 刷新した看板デザートが全社収益も押し上げ

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パティシエの経歴をもつ、商品開発部の木下慶一さん(撮影:梅谷秀司)

生地の原料となる粉は配合にこだわった自社開発のものを使用。また、“懐かしい”というキーワードには、「母親がおやつに作ってくれたような」という意味合いも込められるところから、手作り感を重視した。その結果、店舗で注文を受けてから手焼きするという提供スタイルになった。また、アイスクリームやソースを付け合わせることで、食感の変化を楽しめるように工夫。つまり、パンケーキの生地に溶けたアイスやソースがしみこむため、しっとりとした食感も味わえるということだ。

キャラメルハニー、ハニーベリー、Wチョコソースの3種類で展開した新しいパンケーキは大当たりし、先行のテスト販売では1日100食という驚くべき売れ行きを記録した。現在でも、平均で1日に28食ほどが売れている状況で、これはリニューアル前と比較し、4〜5倍の売れ行きに相当する。デザート全部を合わせても日に88食というから、パンケーキ人気の突出ぶりは明らかだ。

「今年4、5月のデニーズ単体での売上げは、昨年同期比5%アップ。数字をパンケーキが押し上げていることは間違いありません」(広報・山瀬さん)。

パンケーキは男性からも高い支持

さらに店側でも予想外だったのが、男性からの支持が高いことだ。「もともとデニーズの中心的な客層は30〜50代。10〜20代にも足を運んでもらおうと、デザートに力を入れてきた背景があります。ところが実際に調査してみると、とくにパンケーキは40代の男性からの注文が多いことが分かりました」(広報・山瀬さん)。

考えてみれば、スイーツのお店はやはり女性の領分という印象があり、男性だけでは入りにくいもの。しかも、いくらパンケーキが話題だからといって、わざわざそれだけを目的に、専門店まで出かけて行く気はしない。いっぽうどこにでもあるファミレスなら簡単に、気軽に入れるし、食事のついでに堂々とスイーツを注文できる。デニーズでのパンケーキ人気の背景には、そんな男性心理があるかもしれない。

そして、さらにその人気を後押ししているのが、さまざまなフェアや季節限定商品による宣伝効果だ。たとえば4月に期間限定で行われた「アメリカンフェア」では、通常のパンケーキであれば3枚のところを、6枚積み重ねた「タワーパンケーキ」が登場。インパクトのある外見がマスコミ、SNSでの話題となって、タワーパンケーキだけで1日4〜5食売れた。しかもその間、定番3種類の売れ行きも落ちることがなかったという。

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