さらば広告マン、目覚めよ社内マーケター!

ビッグデータで高まる「組織横断マーケティング」の重要性

 日本企業ではジェネラリストの人事ローテーションが基本だ。このローテーションに入らないと社長にはなれない。しかし、こうした順繰り人事の時代は、そろそろ終わるだろう。企業経営者にはすべからくマーケターとしての知見が必要となってくる。マーケティングのスペシャリストであることが経営者トップに求められる素養のひとつになる。
 というのも、マーケティングという概念が「広告・販促」という狭い概念から、経営の根幹としてのマーケティングに再認識されているからである。つまり、開発・生産・物流・労務・財務など事業のバリューチェーンのあらゆる領域において、マーケティングが必須になっているのである。これからはマーケティングが企業の収益を直接動かすキーファクターになる。これは営業や生産の地道な活動による「ゲンバ」主義であった日本企業の大きな転換点にもなりうるだろう。そして、このマーケティング時代到来の黒船役として、ビッグデータに象徴される「データマーケティング」が大きく後押しをしていくことになるはずだ。
 しかしこのようにマーケティングの重要性が高まる一方で、今、多くの日本企業には組織内にマーケティングのスペシャリストを育成する装置はない。ジェネラリスト向けの人事ローテーションは、マーケティングのスペシャリストを育成することを阻害している。マーケティング人材育成の仕組みを持たない日本企業は、どうやってマーケティングのスペシャリストを獲得するのか……。外部に求めなければならないのか。本連載において今後の日本企業のマーケティングのあり方と新しいマーケター像を考えていきたい。

P&Gのキャリアは時代遅れ!?

「CMOの未来は、“組織内マーケティング”を確立させることにある」

DIGIDAYで掲載されたx+1の記事が印象的だった。過去にP&GのCMOを務めたジム・ステンゲル氏とスティーブン・クック氏、この元CMOの2人が「これからのCMOの未来(What The CMO of The Future Looks Like)」についてコメントしている。

「P&Gといえばマーケティング」、これは誰しも抱くイメージである。その象徴ともいえるのが広告宣伝の規模。P&Gはグローバルで約2500社の広告代理店と取引をし、さらにその取引総額は年間約1000億に到達する世界最大規模の広告主である。トイレタリーや洗剤など、生活に密着するブランド製品の数々のマーケティング経験やキャンペーン企画を積み重ねプロとして上り詰めていく。プロフェッショナルのマーケターといえば、米国でもこれが王道パターンであった。しかし、クック氏が「私の費やしたこうした13年間のP&Gでのキャリアは、今後やってはいけない例だ」と皮肉ぎみに言うように、未来像は変わってきている。

「これからのCMOは広告に費やす時間と労力を削って、どの市場でどう戦って競合優位性を生み出すかという優れた戦略眼を持つことが必要になる」

これは何もCMOだけにとどまらない。今までの広告を使った「戦術家」から、組織をまとめていく「戦略家」として、マーケターの変革が求められているのである。そしてその武器のひとつは、間違いなく“データ”にある。

これを象徴するかのように2014年6月、P&Gでは米国のデジタルメディア予算の70~75%をデータに基づく自動買い付け(プログラマティックバイイング)に移行させると表明しており、まさに、データを味方にした、新しいマーケティングの流れを予感させる。

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