JR長距離列車「銀河」、乗って感じた気になる点 寝心地は最高の出来栄え、ほかの部分はどうか

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いよいよ6号車。最も豪華なグリーン個室「プレミアルーム」車両である。2人用個室4室と、1人用個室1室、フリースペース「彗星」が備わる。

1室しかない1人用個室の男性客と出会い「個室をぜひ体験してください」と言われる。寝台特急サンライズ出雲のA個室寝台に匹敵する広さであり、座席兼寝台が枕木方向に向いている。寝台幅は79~90cmもあり、寝心地はかなりいい。

彗星は、運転席の後ろに設けられており、2席分の座席がある。座席の位置が高く取られ、前面展望も楽しめる。側窓も開き、風景写真が撮りやすい。

6号車のフリースペース「彗星」
6号車「プレミアルーム」(編集部撮影)

最後に2人用個室のプレミアルームを体験する。この個室は台形で、中央通路が折れ曲がっている。個室の奥行は4mと広く、端と端に離れると会話がしにくいほどだ。

個室内には窓向きの座席が備わる。床面が高いので、視界一杯が風景となる。窓向き座席の座り心地は普通だが、寝台に転換できる座席なのでやむをえない。この座席は背もたれを倒して寝台となる。部屋が台形なので、寝台も台形である。測ってみると、広い部分は135cm、狭い部分は90cmである。同行の友人が部屋を見て「男性2人だと厳しいですね」と言う。

側扉には寝台特急と同じ番号式の鍵も備えられ、個室寝台に近いが、寝具はファーストシートと同じで、個室寝台ではない。なお、側扉が硬めで、両手で力を入れないと開かないのが気になる。寝心地だが、寝台はほかの設備と同じく硬めであった。ただし、騒音や振動はさほどでもなく、十分に寝られる設備であった。

旅人の気持ちとなったおもてなしを

大阪までの14時間があっという間だった銀河だが、細かな点で課題も感じた。車内放送の音量にばらつきがあり、1号車にいた私たちは案内放送を聞き逃した(6号車にいた友人は聞こえたと言っている)。それもあって「どうおもてなしがなされるのか」乗客が把握しにくい。

また、供食サービスも心配である。旅行商品なので弁当と夜食が付いてきたが「みどりの窓口」で一般販売されたら、全員が食事できるだろうか。あと、車内に自動販売機がないので、駅で買い逃すと飲み物が買えない。4号車に設けた方がいいと思える。

観光列車として気になるのは、人的サービスが少ない点。車掌が記念乗車証を配るなど、存在はするのだが、車内イベントなどもあったほうがいい。車窓ガイドや話題となっていたサンライズ出雲とのすれ違い時刻なども、案内したほうがいいだろう。

また改造車で仕方ないが、シャワーがない。9月で汗だくの乗客も多くいた。長時間停車時には温泉に立ち寄り湯ができるようにするなど、入浴サービスがあってもいいのではないか。

最後に、非常に優れた点を挙げたい。車体・車内のインテリアは目を見張るもので、すばらしい空間に包まれる喜びがあった。就寝時間中の長時間停車で、騒音や振動が抑止されていたことも、これから乗車する皆様にお伝えしたい。

安藤 昌季 乗り物ライター

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あんどう・まさき / Masaki Andou

1973年、東京都生まれ。編集プロダクション「スタジオサウスサンド」代表で、通勤電車の座席から寝台まで広く関心を持つ「座席鉄」。「鉄道ぴあ」「旅と鉄道」「AERA.dot」「週刊日本刀」などで、乗り物・歴史関係の執筆を広く手掛けるほか、鉄道キャラクター企画、ゲームデザイン、イベント主催なども。著書は「教えてあげる諸葛孔明」(角川ソフィア文庫)、「夢の新幹線 ものしり学習帳」(玄光社)「日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き」(天夢人)

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