大学は甲殻動物から脊椎動物になった?? 古市憲寿×吉見俊哉対談(下)

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 「大学には3回通うことが当たり前の社会」へ。
 NHKのEテレ「ニッポンのジレンマ」(4月27日(日)0時~)の今回のテーマは「大学」。「“救国”の大学論2014」と称して、大学内外の論客が議論する。番組内では、東京大学副学長の吉見俊哉氏(東京大学大学院情報学環教授)に番組MC社会学者・古市憲寿氏がインタビューしているのだが、吉見氏から出てきたのが、冒頭の提言である。
 昨年、政府の教育再生実行会議は「大学力こそ日本の競争力の源、成長戦略の柱」とし、世界トップ100に日本から10大学を掲げ、「大学の国際化」「グローバル人材育成」「人物本位の入試」といった指針を挙げている。
 今回の「ニッポンのジレンマ」では「人材論」「制度論」にフォーカスするが、これから日本の大学は「どう変わるべきか」。今回の記事では、吉見氏からの「変革」の提言の一部を紹介する。
■前編「ニッポンの大学の”ジレンマ”とは?」はこちら

大学は甲殻動物から脊椎動物へ!?

古市:これから大学変革の主体がいない中で、大学はどう変わっていくのでしょうか。

吉見:もっとも重要なのは、基本的なビジョンの共有ですね。未来の大学は、比喩的に言うと「甲殻動物から脊椎動物へ変わるべきだ」と思っています。ちょっとわかりにくい(笑)。

日本の大学は、甲殻動物のように殻が硬く、内側が融通無碍というところがあった。典型が「大学入試」で、入るのは難しいけど、入ってしまえば卒業は簡単だと思われている。入るまではあまり中のことは考えない。大学組織も、それぞれの学部、学科、研究室が分かれていて、お互いにできるだけ干渉しない。これは日本社会にも言えることで、会社組織など「殻」が硬い社会だと思うのです。

一方、1980年代から日本社会が体験してきたのは、グローバリゼーションです。さまざまな意味でのボーダレス化が進み、硬い「殻」が壊れつつある。殻が壊れてくるときに、ただ壊れるままにしておけば、ずぶずぶの軟体動物のようになってしまい、質が劣化していきます。

大学の質の悪化を防ぐには、「殻」を壊れさせながら、「骨」を通して、脊椎動物化する必要があります。さらに「縦骨」と「横骨」を通すことが重要になってくるのです。

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