東大カリスマ教授の「教育論+メディア論」 塩野誠×松尾豊 特別対談(下)

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今、最もホットな分野のひとつである人工知能。人工知能とウェブに関する最先端の研究を進めるのが、松尾豊東京大学准教授だ。キュレーションサービスGunosy開発者も、松尾研究室出身。前回に引き続き、連載「キャリア相談」でおなじみの塩野誠氏との対談を通して、教育論・大学論・メディア論を語りつくす。

※ 前編はこちら:東大カリスマ教授の「超ハック術」

すべての教育はトレードオフ

塩野:指導している学生のクオリティは上がっていますか?

松尾:いや、そこがけっこう難しいところです。「教育はすごいトレードオフだなあ」と思います。こちらがやってあげるじゃないですか。そうすると、確かに業績は出る。でも本当に身に付いたかというと、実際はそうでないこともある。放っておくと、なかなか業績が出ないのですね。まあ、そうした中でいろいろ試行錯誤すると、パワーアップするわけですが。

塩野:構うのと放置する、そのバランスが難しいですよね。

松尾:教育は、ほとんどのアクションがその人にとってよい面と悪い面の両方があると思います。

塩野:なるほど、すべてのアクションはトレードオフであると。それは会社の新人教育ともまったく一緒ですよね。どこの段階で放置して、ミスったら俺が責任取るからって言えるかという。毎回、責任を持ってしまうと、甘えてダレてしまう。難しいですよね。

松尾:あと最近思うのは、どうやったら仕事の組み立て方を教えられるのかな、ということ。うちの研究室だと、エンジニア志向、理系の人が多いのですね。理系の人はどうしても問題を区切ってしまう。「自分が解くのはここで」ということが快適になっている。

塩野:最初に定義付けしないと、はみ出てしまいますからね。

松尾:その定義付けをするときに、それ以外の要素はどうなるのかを考えたうえでならいいのですよ。ところが、そこはあまり考えずに、「僕が解く問題はこれです」と言ってしまう。でも、「それって、そもそも大事なんだっけ?」というふうに、後からちゃぶ台返しになってしまう。

それから、やり方がわかりませんというのも多い。わからないというのは、そりゃ人類だいたい何でもわからないので(笑)。その中で、自分で調べるとか、人に聞くとか、いろいろあるわけですよね。その中の、どの選択肢を取るかっていうことだと思いますが、それがなかなか伝わらない。

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