独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」はデカいということは前回も書いたが、もう一度しつこく書きたくなるデカさである。全長210メートルで幅38メートル。松本零士デザインの宇宙戦艦ヤマトは全長265.8メートルで幅34.6メートルだからいい勝負だ。
そしてちきゅうは、波動砲を持たない代わりに、海面から121メートルにもなる高さのやぐらを備えている。このやぐらがあるから、清水港に停泊中のちきゅうは静岡駅よりちょい東で東海道新幹線の車窓からも視認できるのだが、なぜこんなに高いやぐらが必要なのだろうか。
それは、海底に深く穴を掘るためである。深く掘るには、ちきゅうからドリル付きの長いパイプを下ろす必要がある。そのパイプを吊り下げるのが、やぐらなのである。
深く掘るための工夫
パイプを吊り下げて海底に穴を掘る。そこには安全に安全を期した繰り返しがある。まず、ここを掘り進めると決めたら、先端にビットのついたドリルパイプで海底に軽く穴を掘る。これはそんなに深くない。掘りながらその井戸が崩れないように、コンダクターと呼ばれるパイプをはめ込み、そこをセメントで固定する。このとき、コンダクターパイプのてっぺんには、ウェルヘッドと呼ばれる装置が設置されている。
続いて、BOPと呼ばれる噴出防止装置を、ライザーと呼ばれるパイプにぶら下げて船からウェルヘッドめがけて下ろす。このBOPがなければ、万が一にでも石油層などを掘り当ててしまうと、ガスや原油が噴出してしまい。ちきゅうだけでなく自然破壊にも繋がりかねないのだ。
さて、BOPとウェルヘッドが結合すると、海底とちきゅうとが固定される。そしてライザーパイプの中にドリルパイプを下ろし、掘削を進めていく。
掘り進めると穴が崩れる心配があるので、ある程度掘ったら、仮壁としてのパイプ(ケーシングパイプ)を下ろし、セメントで固定する。これを繰り返し、固定しながら掘り進める。こうした工夫をすることで、ちきゅうは水深2500メートルのところから、さらに7500メートルを掘り進める能力を持っている。
穴を掘っているのも、ドリルパイプというパイプだ。パイプというからには中は空洞。中を何が通っているかというと、泥水(でいすい)である。ケーシングパイプを下ろしてセメントで固定するまでの間の崩落を防ぐため、粘土のある水をドリルパイプの中を下ろし、ドリルパイプとライザーパイプの間を引き上げて循環させ、パイプを押しつぶそうとする巨大な地圧と均衡するよう圧力を保っているのだ。
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