仕事の大敵!肩こりに潜む危険性&正しい解消法 たかが血行不良と侮るなかれ!

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たかが血行不良と侮るなかれ

一方、単なる肩こりは、首から肩、背中にかけて広がる僧帽筋(そうぼうきん)に関係している。同じ姿勢を続けることで、筋肉の血行が悪くなって老廃物がたまり、筋肉が硬くなって弾力性が失われて肩こりの症状を引き起こす。もみほぐして血流がよくなると、症状が和らぐのはそのため。しかし、たかが血行不良と侮ってはいけない。ひどい肩こりが心身に悪影響を及ぼすことがある。

「首と頭蓋骨の間の左右には、『健脳穴(けんのうけつ)』というツボがあります。後頭動脈や後頭神経などが通る場所で、ひどい肩こりでは頭部への血行不良にも結び付くのです。人間の身体は、『頭寒足熱(ずかんそくねつ)』といって、頭は冷やして、足を温めることが健康に役立ちます。頭部へ行った血液が肩こりに阻まれて、下へ流れずに鬱帯(うったい)すると、眠れない、あるいは、うつなどの気分障害だけでなく、脱毛や白髪、肌荒れなどにも結び付きやすいのです」

ストレスでも血行不良は起こしやすく、肩こりがそれに拍車をかけて、頭部の血行を悪化させていく。なんとなく気分が優れない、眠れないという状態が続くのは、血行不良の証し。さらには、頭皮の血流が悪くなることで、栄養不足に陥り、脱毛や白髪などが生じやすくなるそうだ。

「ひどい肩こりでは、食べ物をかもうとするときに、痛みなどを感じる顎(がく)関節症を引き起こす人もいます。眼精疲労や、耳の聞こえが悪い人も、肩こりを解消することで、症状が軽減される人は多い。肩こりは『万病の元』といっても過言ではありません。認知症に関与している可能性もあり、肩こりは日々解消するようにしていただきたいと思います」(福辻院長)。

グイグイ押すのは逆効果!

肩こり解消では、もみほぐすのが一般的。コチコチの肩こりには、グリグリと力を込めて押すという人もいるだろう。ボールペンなどで、ツボをグイグイ押すという人もいる。ところが、それらは逆効果になる。

「力を入れてもむと、筋肉が反発し、毛細血管はより一層硬くなります。つまり、こりは解消されません。タオルを適温に温めて肩に置き、やさしくゆっくりもみほぐすのが効果的です。中には、マッサージを受けて、もみ返しを経験する人がいますが、それはマッサージの力が強すぎた結果といえます。力が入りすぎるのはよくありません。また、肩を温め続けるのも、筋肉組織に負担がかかり逆効果です。適度に温めたタオルは、しばらくすると冷めるでしょう。温めて冷ます、ゆっくり押して力を抜く、そういったリズムが血行を促進するのです」(同)。

ひとりで肩こりを解消するには、ツライ部分に反対側の手の人差し指や中指を当てながら、肩をゆっくり回すとよいそうだ。ホットタオルを活用するとさらにベター。ただし、寝ている間中、肩を持続的に温めるようなことは避けること。また、パートナーに肩をもんでもらうときには、背中や腰も合わせて行うと効果的という。

「肩こりは僧帽筋がメインですが、僧帽筋は、背中の広背筋(こうはいきん)や、お尻の筋肉の影響も受けます。右の腰を痛めているときには、左肩がこるように、Xの文字のように痛みやこりが生じやすいのです。前方の鎖骨やろっ骨の筋肉が関係していることもあります。そのため、誰かに肩をもんでもらうときには、背中や腰も一緒にもんでもらうと、肩こりを解消しやすいのです。背中や腰もゆっくりやさしく押しましょう。それでも、症状が改善されないときには、お近くの鍼灸師など、専門家に相談してみてください」と、福辻院長はアドバイスする。

安達 純子 医療ジャーナリスト

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あだち じゅんこ / Junko Adachi

東京生まれ。医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。大手企業のOLから転身。フリーランスの雑誌記者としてさまざまなジャンルの取材を行う中で、病気の発生メカニズムに興味を持ち、医療関係の記事の執筆に比重を置くようになった。現在は、先進医療といった最新の医療状況をはじめ、免疫疾患や感染症などに強い関心を持つ一方で、生活習慣病といった身近な病気を対象とした記事を数多く新聞等で連載中。身体に個人差がある中で、その人にとっての健康とはなにか。病気の仕組みはどこまで解明できるのか。また、未知の病気の正体はどこにあるのかなどをテーマに現在取材を進めている。

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