「熱海-黒磯270km」を走る長距離列車の全貌 ロングラン通勤電車が1都5県を駆け抜ける

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「上野東京ライン」とも「宇都宮線直通」とも言わなくなった放送を聞いて宇都宮線に踏み出すと、次は尾久。駅自体は極めて地味だが、東京の北の玄関としての上野駅に出入りした幾多の列車の車両基地がある。ちょうど品川に対峙する存在で、電気機関車の田端運転所以外は車両の所属区としての使命は終えたが、清掃整備や仕業検査を伴う折り返しや電留線の機能として存在している。朝の通勤輸送を担った編成が入庫して、夕方の出区を待っていた。

京浜東北線をくぐった王子駅手前で、新宿、池袋を経由して山手貨物線から東北貨物線へとたどってきた湘南新宿ラインの列車と再び並んだ。列車番号の表示を注視すると平塚で接続した高崎行き特別快速の4826Yであった。時刻は熱海からちょうど2時間を経たころで、こちらがわずかに先行して赤羽に到着。以後もややリードして浦和へと進んだが、ホームは別のため接続はしない。次に、貨物ヤード跡に東京都心から官庁機能の一部が移転して誕生したビル街のさいたま新都心に停車していると、東北貨物線上には旅客ホームがないため、4826Yが構内で待避しているタンク貨車の脇を一気に駆け抜けた。

熱海から3時間

大宮もそれぞれ別のホームに到着し、やはり相互に乗り換えられるほどの停車時分はないまま、同時発車した。そして一瞬、双方の列車は1mあるかないかの間隔で並んだ後、高崎線と宇都宮線で八の字に離れた。

午後の間延びした時間、もはや変哲のない複線を北上する。やがて窓外の風景も畑地交じりの郊外住宅地となり、都会の風景でもなければ特段の景勝地でもない。歯抜けのロングシートに座っているのは、車両にもよるだろうがビジネス用務の男性客ばかりになり、乗客層はさらに変化、割合としては普段着の高齢者が増えてきた。

栗橋までが埼玉県で、利根川を渡った古河は1駅のみ茨城県をかすめる。ワイシャツ姿の男性らが三々五々下車したが、リュックサックの姿からは周辺の工業団地が目的地かと察せられる。車窓にメーカーの工場を見た。

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