「熱海-黒磯270km」を走る長距離列車の全貌 ロングラン通勤電車が1都5県を駆け抜ける

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「スーパービュー踊り子2号」を追って来宮から回送される1586Eは、発車2分前に入線した。そのころにはホームに列が長く延び、ドアが開くやラッシュ時の始発駅さながら、一瞬にして座席が埋まった。それはそうだ。温泉帰りで、少なくとも大船、横浜あたりまでは乗車するだろうから、着席は必須。グリーン車も満席に届きそうな勢いだ。

2016年に新駅となった熱海駅(写真:杉山 慧)
熱海駅の発車標。上野東京ラインと表示されている(写真:杉山 慧)

乗車したのは10号車。E233系ならば基本編成の両端各2両、1・2・9・10号車がボックスシートを備えたセミクロスシート車だが、E231系基本編成では1・2号車だけ。ちなみに付属編成は両系列とも黒磯方の14・15号車で同じである。

純粋に旅行を楽しむならボックス席を選んだが、列車内外の様子を観察するならば前後端は適切と言えないので、中ほどに乗った。ゆえにロングシートで、日ごろなじみの中央総武緩行線と変わりない。ただ、通勤電車と違ったのは、乗客の大多数がシニアおよび女性で占められていたこと。4人、5人、6人となれば、かしましい。

熱海は静岡県だが1駅目の湯河原から神奈川県。箱根の山地が相模湾に落ち込む急峻な地形から、トンネルや高い橋梁が断続する。湯河原、真鶴からも観光客が乗り込む。根府川では眼前に迫るほどの海原を見下ろす。東海道線もこの付近は観光気分を高揚させる要素に事欠かない。

小田原で乗客の多くが下車

湘南新宿ライン特別快速高崎行きの案内があったのは小田原で、そこで最初の大きな動きがあった。その特別快速よりも小田急線への乗り換えが多そうで、人々の会話からは小田原市内や箱根湯本で昼時を過ごす人も多いらしい。空席が生まれるほど空き、普段着の姿となった。

分岐する御殿場線高架をくぐると国府津に到着。小山車両センターとともに上野東京ライン、湘南新宿ラインの車両を預かる車両基地、国府津車両センターの最寄り駅である。ただし基地は御殿場線の沿線に広がっており、東海道線電車から見える位置ではない。運転上の要衝駅なので乗務員基地も置かれ、運転士、車掌とも交代した。

平塚で4分ほど停車し、小田原で案内があった湘南新宿ライン4826Y、特別快速小田原発高崎行きに道を譲った。藤沢、大船と横浜に近づくにつれ、車内はビジネスマンが増えてきて、荷物を持った温泉客は静かに目を閉じ、人々の中に埋もれた。戸塚では、大船から複々線として並行する横須賀線列車と相互接続を図り、同時発車する。

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